平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ワルキューレ

2011年01月21日 | 洋画
 シュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)の<狼の巣>爆破によるヒトラーの暗殺。
 僕はこの事件は知っていたが、まさかこの後にクーデター計画が用意されていたとは思わなかった。
 非常事態が起こった際に、ベルリンの予備軍を動かすことが出来る<ワルキューレ作戦>。
 これをシュタウフェンベルク大佐はクーデターに利用しようと考える。
 すなわち、ヒトラーを暗殺した後、<ワルキューレ作戦>を発動。
 予備軍を使ってヒトラーの親衛隊を鎮圧し、ベルリンを掌握する。
 そして一気に新しい政府を作る。
 なるほど、新しい政権を作るには、単なる独裁者の暗殺だけではダメで、力(=この場合は軍)に拠る政府や放送局の掌握が必要なのだ。

 ここに様々なドラマがあった。
 まずは、ヒトラーの側につくかクーデターの側につくかという葛藤。
 ベルリン警察は、ヒトラーがドイツを滅ぼすと考え、クーデター側につく。
 シュタウフェンベルク大佐を逮捕しない。

 <ワルキューレ作戦>の発動権を持つ司令官フロム(トム・ウィルキンソン)は、ヒトラーの側につき、クーデターに加担せず、拘束される。

 中立の立場を取る者もいる。
 軍の命令を伝達する電報局。
 電報局長は、「われわれの仕事は政治に関わることではない。電報を伝達することだ」と言って、ヒトラーの体制から出て来る命令とクーデター軍の命令を両方とも流す。

 状況がわからず、命令を受けたから実行しているという人間もいる。
 予備軍を直接指揮する現場の将校・レーマー少佐だ。
 レーマーはクーデター側から流れる命令を実行し、クーデターを推進する。しかし、彼は自分がクーデターに加担しているとは思っていない。忠実に命令を実行しているだけだと思っている。

 このように様々に展開される人間ドラマ。
 そしてクーデターは成功するかに見えたが、あることをきっかけに崩壊していく。

 以下、ネタバレ。

 ヒトラー暗殺は結局失敗で、生きているヒトラーが予備軍のレーマーに自分の命令に従うように電話するのだ。
 これによりクーデターの推進力である予備軍は動かなくなる。むしろ反クーデターにまわる。
 オセロゲームで○があっという間に●に変わるように、クーデター側は追いつめられていく。
 そしてヒトラーの体制は復活して、クーデター側は粛正される。

 この作品は歴史を題材にした壮大なドラマだ。
 描きたかったのは、トム・クルーズのシュタウフェンベルク大佐を始めとするヒトラー打倒という信念に生きた男たちの姿であろう、
 そのテーマが、クーデター側が粛正されることで、より強く伝わってくる。

 そして歴史は、このような様々な人間の思いや葛藤や闘い、偶然という神の悪戯みたいなものが折り重なって展開されていく、ということがわかる。
 もし、ヒトラーの暗殺が失敗に終わらなかったらクーデターは成功していたであろう。
 まさに<神の悪戯>である。


コメント
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