平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

親父の背中 「北別府さん、どうぞ」~実に鮮やか! ひさしぶりの三谷幸喜マジック!

2014年09月15日 | ホームドラマ
 ひとつついたウソがどんどん拡大していって収拾がつかなくなる。
 いかにも三谷幸喜作品ですね。

 このウソにどう決着をつけるんだろうと思っていましたが、ラストの展開も実に鮮やか。

 本人は意識していなかったのでしょうが、結果として、北別府(小林隆)は、医者のふりをすることで<役者としての自分>を息子・寅雄(須田琉雅)に見せていたんですね。
 役者というのは、簡単な衣装や小道具で別人になりきることが出来る職業ですが、それは北別府も同じ。
 彼は白衣一枚で医者になれるし、診察室の集合写真ひとつで泌尿器科の医者を演じきれる。
 現実の病院を舞台に変え、本物の医者や看護師を相手役にして主役を演じられる。
 後日、あれがウソだったことを知った寅雄は、<役者としての父親の凄さ>を実感したに違いありません。
 そして、自分も父親のような役者になりたいと思った。
 実に鮮やかなオチです!

 また、この間、北別府は寅雄に何も教訓めいたことを語っていない。
 息子に見せていたのはウソばっかり。
 それでも寅雄は役者という職業の魅力を学んだんですね。
 まさに親父の背中!

 そして、タイトルでもある「北別府さん、どうぞ」のせりふの使われ方の見事さ!

 こういう語り口の鮮やかな作品を観ると、感心してうなってしまいます。

 最後に看護師役で酒井若菜さんが出ていたのがうれしい!


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

軍師官兵衛 第37回「城井谷の悲劇」~城井谷をどう攻めるか、お前が策を考えろ

2014年09月15日 | 大河ドラマ・時代劇
 秀吉(竹中直人)をコントロールできなくなった官兵衛(岡田准一)。
 中国大返しの時まではそうではなかったんですけどね~。

 権力とはかくも人を変えるものなのか。
 権力を持つと、万能感が生まれる、同時に逆らう者や自分の地位を脅かす者を怖れるようになる。
 あとはまわりに、石田三成( 田中圭)のようなイエスマンばかりを集めるのも困りもの。
 完全に<裸の王様>になってしまう。

 官兵衛もつらいでしょうね。
 秀吉なら寛容で笑いがいっぱいの世の中をつくれると思って手を貸してきた。
 秀吉という人間を信じてきた。
 ところが、今は決裂寸前。
 ふり返って考えてみれば蜂須賀小六は幸せだった。
 秀吉が一番いい時代の時に死ぬことができた。
 長生きが必ずしも良いわけではない。

 アンダーコントロール出来ないのは長政(松坂桃李)も。
 城井谷を勝手に攻めたのもそうだが、宇都宮鎮房(村田雄浩)を謀殺したのも官兵衛の本意ではなかっただろう。
 今回は「黒田が生き残る道はただひとつ……」というせりふで先送りになったが、官兵衛は秀吉を説得するどんな策を考えていたんだろう?

 官兵衛は中間管理職で支店長。
 しかも、ちょっと有能でない。
 社長の理不尽な命令には従わざるを得ず、部下は勝手な判断で動いてしまう。
 これはドラマのヒーロー像としてはイマイチ。
 今のトレンドは理不尽なことには敢然と立ち向かう半沢直樹ですからね。
 そんな中、作家は官兵衛をいかに魅力的に描けるか。

 長政が城井谷を攻めて敗走して来た時は、官兵衛は怒っていませんでしたよね。
 若さゆえの過ちとして許していた。
 演じた岡田さんの表情もそんな感じだった。
 官兵衛が怒ったのは、長政が「今は敵が油断しているから城井谷を攻める好機」と言った時。
「また同じことを繰り返すか! なぜ負けたかを頭を冷やして考えろ!」
 長政は勢いだけで、深く考えることをしない。失敗から学ばない。
 だから、じっくり考える機会を与えた。
「城井谷をどう攻めるか、お前が策を考えろ」
 今の長政に必要なのは、じっくり考えたことに拠る成功体験。
 失敗から学べないのであれば、成功から学ぶしかない。

 こんな長政と対照的に、糸(高畑充希)はデキる子ですね。
 光(中谷美紀)が長政の無事な帰還を告げると、
「当たり前です。殿がたやすく死ぬ者ですか」
 長政が落ち込んでいると、
「つらくても前に進むのが上に立つ者の役割です」
「私も家臣たちも殿とともに戦っているのでございます」

 宇都宮鎮房の娘・鶴(市川由衣)を迎える黒田家もやさしい。
「私もよく叱られました」「私もです」「私も」「私も」「私も」。
 明るくて他者に寛容なのが黒田家の家風。
 職隆(柴田恭兵)や官兵衛が大切にしてきたもの。
 しかし、外の世界では……。

 官兵衛の苦労はさらに続く。

 人間、上り坂の時は苦労も楽しいんですよね。
 一方、その人間の真価が試されるのは、下り坂の時。
 さて、どのように描かれるか?

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする