平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

浦沢直樹の漫勉~浅野いにおさんのデジタルとアナログを融合させた作画手法!

2016年01月15日 | コミック・アニメ・特撮
 浦沢直樹の漫勉(NHK・Eテレ)で浅野いにおさんが出ていた。
 「ソラニン」「おやすみプンプン」「素晴らしい世界」「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」などの漫画家さんだ。

 浅野さんの細密な背景画はこんなふうに描かれていた。
 自分で写真を撮ってきて、これを画像処理ソフトで線画にする。(デジタル処理)
 その線画にさらにペン入れして描き足す。(アナログ処理)
 つまりデジタルとアナログの融合だ。

 では、なぜ浅野さんはペン入れして、アナログ要素を入れるのか?
 それは、アナログの人間っぽさが面白いかららしい。
 アナログ世界では、デジタルのような完全な曲線はない。
 ムラがあり、エラーがあり、アクシデントがある。
 番組中の浦沢直樹さんとの対談を引用すれば、
「(アナログは)隙を作るんだよね、読者が入ってくる隙を作る」(浦沢)
「隙って大事で、あまりにハイクオリティなものって、みんな意外と求めていない」(浅野)
「ペン先を使いこなすの、大変だなって、ヒーヒー言いながら描いている線が、実は個性になっている。あまりにうまい線が達者に入っていると、誰かわからない無記名な感じになってしまって」(浦沢)
「デジタルだと『完全なきれいな曲線』というのが描けるんですけど、もうそれって、計算で、数式で表せる線だから、誰でも再現できる線になっちゃう。ムラとかエラーを起こしている部分がそれぞれの絵の個性ということになる」(浅野)

 的確なデジタル・アナログ論だ。
 クリエイターというのは、こういうことを考えているんですね。

 この視点で言うと、問題になった佐野研二郎氏のオリンピックエンブレムってつまらないよなぁ。
 完全なデジタル世界。
 ロゴデザインと漫画とは違うとは思うが、佐野氏のデザインを見た時の冷たさの理由ってこういうことだったのか。
 それにあのデザイン、
 基本は○とか□の図形の組み合わせだから、シロウトがやっても創れないものではない。
 浅野さん、浦沢さんの言葉を借りれば、「誰でも再現できる」「誰かわからない無記名な感じ」の作品だ。

 番組では、灰皿や木魚や蚊取り線香の蓋をデジカメで撮って、それを加工し、ペンを加え、宇宙船や未来兵器にする作業が紹介されていた。
 面白いなぁ、こういう創作術。
 何しろ木魚や蚊取り線香の蓋が宇宙船になるんですからね。
 宇宙から来た侵略者の絵を20パターン描き、それを拡大縮小し、コピペして貼り付けていき、侵略者のモブシーン(群衆シーン)を創る過程も紹介されていた。
 この作業は一般的にやられていることだと思うが、浅野さんはこの作業に5時間をかけ、侵略者を加えたり消したりすることを心から楽しんでいた。
 そして「この作業に正解はない」「やろうと思えば、いくらでも継続してやれる」といった主旨のことを語っていた。
 この心から楽しめる姿勢こそが作家なんでしょうね。
 ここには効率よく絵を描いて、生産性をあげて、金儲けしてやろうなどという意思はない。

 浅野さんは、このデジタルとアナログの融合で、絵の可能性を拡げていきたいらしい。
 今後も浅野いにおさんの描く世界に注目だ。


※関連サイト
 浦沢直樹の漫勉・浅井いにお(NHK ONLINE)

コメント
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