「いくさには勝ったのに、なぜこのような目に遭わねばならぬのか。
さぞ理不尽と思うておろう。
その理不尽な思い、さらに膨らませてやる。
わしは、おぬしから、一切の兵と馬と武具と金と城と今後いくさに出る一切の機会を奪う。
この生き地獄、たっぷりと味わうがよい」
家康(内野聖陽)が昌幸(草刈正雄)に言ったせりふだ。
生きていると理不尽なことが多い。
正義はおこなわれないし、巨大な権力は黒を白にしてしまう。
そんな現実を前にして、人は愚痴を言ったり、いらだったりする。
昌幸でさえも
「信長がいた頃は苦労も多かったが、生きているという実感があった。わしは長生きしすぎた」
と愚痴を言い、
「この役立たずが! 何のために徳川についた!?」
と信幸(大泉洋)に当たってしまう。
だが、理不尽な現実の中、人はそれでも声をあげ、戦うのだ。
<意地>
<反抗>
<不屈>
信幸は、父親との縁を切るため「名を捨てよ」と家康に命じられたが、〝信幸〟を〝信之〟に変えることで意地を見せた。
昌幸は、「いずれ会える日を楽しみにしておるぞ」と言った後、「では、おのおの、抜かりなく」。
出浦昌相(寺島進)は重傷で動けない体でありながら、なおも家康を討つ策を考え、あきらめない。
これに対して昌幸も「あいわかった」
石田三成(山本耕史)の妻は、汚名を着せられた夫の名誉回復のために「あのお方は豊臣家のことしか考えていませんでした!」と何度も叫び続ける。
彼らは屈していない。
理不尽な現実に自分なりの方法で立ち向かっている。
真田家の女性たちもそうだ。
つらい現実を<当たり前の日常>にすることで乗り越えている。
姉の松(木村佳乃)は、あたかも普通の旅立ちであるかのように「いってらっしゃいませ! 道中ご無事で」
きり(長澤まさみ)は九度山に来てくれ、と言われて、「行くとしますか」(笑)
明るいですね、彼女たちは。
彼女たちの明るさは救いであっただろう。
信繁(堺雅人)も娘すえと最後に心を通わせた。
すえは、堀田作兵衛(藤本隆宏)が自分の父親だと思っている、と語った後にこう言った。
「またお会いできる日を心待ちにしております」
というわけで、
今回のサブタイトルは「信之」でしたが、「不屈」というタイトルもふさわしいように思いました。
三成の妻の叫びは迫力があったなぁ。
おそらく、こう叫ばずにはいられなかったのだろう。
昌幸の「おのおの、抜かりなく」も深い言葉だ。
昌幸はあきらめていない。まだ立ち向かおうとしている。
さぞ理不尽と思うておろう。
その理不尽な思い、さらに膨らませてやる。
わしは、おぬしから、一切の兵と馬と武具と金と城と今後いくさに出る一切の機会を奪う。
この生き地獄、たっぷりと味わうがよい」
家康(内野聖陽)が昌幸(草刈正雄)に言ったせりふだ。
生きていると理不尽なことが多い。
正義はおこなわれないし、巨大な権力は黒を白にしてしまう。
そんな現実を前にして、人は愚痴を言ったり、いらだったりする。
昌幸でさえも
「信長がいた頃は苦労も多かったが、生きているという実感があった。わしは長生きしすぎた」
と愚痴を言い、
「この役立たずが! 何のために徳川についた!?」
と信幸(大泉洋)に当たってしまう。
だが、理不尽な現実の中、人はそれでも声をあげ、戦うのだ。
<意地>
<反抗>
<不屈>
信幸は、父親との縁を切るため「名を捨てよ」と家康に命じられたが、〝信幸〟を〝信之〟に変えることで意地を見せた。
昌幸は、「いずれ会える日を楽しみにしておるぞ」と言った後、「では、おのおの、抜かりなく」。
出浦昌相(寺島進)は重傷で動けない体でありながら、なおも家康を討つ策を考え、あきらめない。
これに対して昌幸も「あいわかった」
石田三成(山本耕史)の妻は、汚名を着せられた夫の名誉回復のために「あのお方は豊臣家のことしか考えていませんでした!」と何度も叫び続ける。
彼らは屈していない。
理不尽な現実に自分なりの方法で立ち向かっている。
真田家の女性たちもそうだ。
つらい現実を<当たり前の日常>にすることで乗り越えている。
姉の松(木村佳乃)は、あたかも普通の旅立ちであるかのように「いってらっしゃいませ! 道中ご無事で」
きり(長澤まさみ)は九度山に来てくれ、と言われて、「行くとしますか」(笑)
明るいですね、彼女たちは。
彼女たちの明るさは救いであっただろう。
信繁(堺雅人)も娘すえと最後に心を通わせた。
すえは、堀田作兵衛(藤本隆宏)が自分の父親だと思っている、と語った後にこう言った。
「またお会いできる日を心待ちにしております」
というわけで、
今回のサブタイトルは「信之」でしたが、「不屈」というタイトルもふさわしいように思いました。
三成の妻の叫びは迫力があったなぁ。
おそらく、こう叫ばずにはいられなかったのだろう。
昌幸の「おのおの、抜かりなく」も深い言葉だ。
昌幸はあきらめていない。まだ立ち向かおうとしている。
まだ応仁の乱が終わって130年かそこらですからね。朝鮮出兵も泥沼になったし
一国の大名同時の争いではないから、あんなに短期に終わると予想できた人間はほぼいなかったかと…
各地の大名もこの好きにといろいろうごきましたし
それにしても…昌幸+信繁と信幸にわけておいて正解だったか…(苦笑
昌幸に自由にさせておくて、諦めきれなくて死なばもろともと暴走しそうでしたからね。
今まで築き上げてきた地位を晩年になって失ってしまうというのは辛いものだし、諦め切れずに頑迷になってしまうというのは仕方ない。ふつうは失うものが大きいほど博打みたいな舵取りができなくなるものですが
家康、いままで散々やられてきたから…陰険ですね。死ぬより辛い目にって…いや、それが家康のミスか…生かしておいたことで大阪城で死にそうな目にあうのだから
そして、すへ
彼女からみたら、そりゃそうでしょうね。大名の子なんて乳母や教育係が育ててたんだから、こんな感じなのかなぁとおもったり
うーん、ここまできてもきりが側室になる気配もないということは、もうこのまま最後まで行くのだろうか…
相変わらず扱いが邪険(笑)。母親の世話のために九度山につれていこうとしたり、母親は兄のところへとなったらもういいと言ったり
夢とアイデンティティーを奪われること-それも年老いてから-はたしかに殺されることよりも残酷ですね。
信幸改め信之の改名もアイデンティティーの剥奪でした。
しかし、コウジさんはこうした理不尽に対する「意地」に注目されるのですね。
最近のコウジさんは現在の政治・社会の現実に重ね合わせていらっしゃるからでしょうか。
しかし、今回は基本的には「辛い回」であることは間違いありません。そうした中
>彼女たちの明るさは救いであっただろう。
本作の女性たちは皆どこかピントがずれた「変な人たち」ばかりでしたが、こうした「辛い回」の際の緩和剤として計算されていたのではないか、と思えてきました。
松もそうですが、特に夫や息子たちを気遣うよりも、自分の心細さや恐怖のことばかりが頭にある薫の「相変わらず」ぶり、とか。
しかし、関ヶ原の顛末を信繁に伝えたのがすべて女性たちであった、というのも面白い点でした。
小早川秀秋の裏切りについては寧(直接は片桐且元でしたが)のところで。
大谷吉継の最期については春の口から。
そして石田三成の最期については
>三成の妻の叫びは迫力があったなぁ。
「三成の妻」うたは名前も印象に残らないほどに地味なキャラでした。
私の記憶では、最初の登場は三成が信繁を上杉主従と引き離して自邸に泊めた際、無愛想に給仕していた場面。
次は、豊臣家家臣となった信繁が三成を見舞って帰る際に、今度は廊下に手をついて丁重に見送る場面。
そして、信繁が「春の秘密」を三成に問いただした際に、そっと席を立った部面。
おそらく今回の「叫び」は、「うた」にとって一世一代の見せ場だったに違いありません。
いつもありがとうございます。
関ヶ原って面白いですよね。
戦術としても、人間ドラマとしても。
関ヶ原の布陣を見て、後の西洋人の軍人は、「絶対に西軍(石田三成方)が勝つ」と断言したようですし。
あるいは、
関ヶ原後でも、<島津><黒田(如水)><毛利><長宗我部>が連合軍を組んで戦えば、まだ家康に対抗して戦えましたよね。
司馬遼太郎に拠れば、そう言った構想が実際にあったようですし。
まあ、これは薩長同盟という形で、幕末に実現するんですよね。
坂本龍馬も長宗我部系列でしたし。
>ふつうは失うものが大きいほど博打みたいな舵取りができなくなるものですが
おっしゃりとおり、昌幸は頑迷でしたね。
おそらく生涯、家康と戦ってきて二度も撃退したという自負があるのでしょう。
家康の対応や処分もそれを踏まえてのもの。
生涯のライバルでありながら、<昌幸と家康の関係>は<北条氏政と家康の関係>にはならなかったようです。
きりと信繁は面白い関係ですよね。
ずっとこんな感じで行くとしたら、最終回近くになって、ふたりがどんな会話を交わすのか興味があります。
いつもありがとうございます。
>アイデンティティーの剥奪
なるほど、そういうことだったんですね。
次回のサブタイトルは「昌幸」のようですが、アイデンティティーに関わるエピソードが描かれるのかもしれませんね。
>現在の政治・社会の現実に重ね合わせていらっしゃるからでしょうか
ご指摘のとおりです。
僕は<大きなもの><強いもの>が嫌いで、やせ我慢して<反骨>を貫く人に共感してしまうんです。
同じ<反骨>でも、今作の上杉景勝のような弱さをもった人も好きです。
僕の拙文をよく読んでいただき、ありがとうございます。恐縮です。
>関ヶ原の顛末を信繁に伝えたのがすべて女性たち
確かに面白いですね。
信幸や片桐且元あたりに語らせても、いいはずですよね。
何か意図があるのでしょうか?
今作における<女性の意味>は深くツッコんで考えてみる必要はありますよね。
三成の妻・うたに関しては、僕は名前も思い出せないほどの存在だったのですが、この1シーンだけでインパクトを残しましたよね。
脇役を含めたすべての役に愛情を注ぎ、役者さんに見せ場を提供する。
まさに三谷幸喜作品ですよね。