平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ピンクパンサー

2006年11月05日 | 洋画
 ピーター・セラーズが演じたクルーゾー警部がスティーヴ・マーティン主演で帰ってきた。

 そのギャグはこうである。

1.状況に振りまわされる。
 すべてのドタバタコメディがそうである様に、主人公は状況に振りまわされる被害者だ。
 例えば、今回クルーゾーはカジノのボスの取り調べ中に壺の中に手を入れてしまう。そして抜けなくなる。まわりの人間は気づいているのにクルーゾーは壺が抜けなくなったのを隠して捜査しようとするからおかしい。
 ニューヨークのホテルでは強精剤を取ろうとして水道をいじるが壊してしまい水浸しになる。
 文章にしてしまうと少しもおかしくないが、何とかしようとして奮闘する様がおかしい。
 それはまわりに振りまわされながら、頑張って生きている我々の姿を描いているとも言える。我々もそうやって生きているからこそ、クルーゾーに共感して笑ってしまう。

2.ギャグの発展
 ひとつのギャグが発展して次のギャグを生むのも大きな特徴だ。
 警部に昇進したクルーゾー。
 警部用の部屋や秘書も与えられる。
 そして部屋には大きな地球儀が……。
 ピンクパンサーシリーズを見ている人ならここで何かが起こるのがわかる。
 クルーゾーは地球儀を回すが、ねじがはずれていて転がっていってしまう。
 そして転がっていった地球儀が数日後、自転車で走る若者をなぎ倒してしまう。
 窓から投げた物が同じく自転車で走る若者に当たり、意識を失った若者が露店のプロパンガスに突っ込んで、露店が爆発するという3段階の発展ギャグもあった。
 こんな応用もある。
 カジノで秘密諜報部員006に遭遇したクルーゾー。
 006は秘密任務の最中だが、そこへガスマスク強盗が現れる。
 006はガスマスクをして強盗を退治するが、正体を明かせないため、クルーゾーが退治したことに。
 クルーゾーはヒーローになる。

3.クルーゾーに悪気はない。
 ここからはクルーゾーのキャラクターに根ざしたギャグになる。
 先程の自転車の若者もそうだが、クルーゾーはまわりに次々と被害をもたらす。
 自転車の若者にはこんな被害もあった。
 車のドアを開けるクルーゾー。その横を自転車の若者が通り、ドアにぶつかって跳ねとばされる。文章で書くと普通だが、実際に見ると面白い。
 こんな被害ギャグもある。
 ホテル。床にあるねじが気になって仕方がないクルーゾー。盗聴器ではないかと思っている。クルーゾーはねじを外すが、実はねじはシャンデリアをとめていた金具。当然、落ちるシャンデリア。
 この様にクルーゾーの行くところ様々な被害が起きるが、本人はまったく気づいていない。この気づいていない所がギャグになっている。
 そしてクルーゾーの最大の被害者は上司のドレイファスだ。
 今回はクルーゾーのせいで病院送りになる。おまけに親切からクルーゾーはベッドを起こそうとして、ドレイファスの怪我はさらに悪化。ベッドの留め金もはずれて、ベッドはドレイファスを乗せたまま、病院の階段を転がり落ちていく。
 考えてみると、我々のまわりにもこんな人はいる。
 自分は親切に真面目にやっているつもりなのに、まわりに迷惑をかけている人。
 ギャグはまわりにいる人間をデフォルメして描く所から始まる。
 クルーゾーはそれの実にいい例だ。

4.変装・警戒・ハチャメチャな論理
 これもクルーゾーのキャラクターに根ざしたギャグ。
 アメリカに捜査に行くクルーゾーはアメリカ人になり切るため特訓をする。
 潜入するため壁紙と同じ柄の全身タイツを着る。
 自分は敵に命を狙われていると思って、掛かっているカーテンを引き下ろして敵の存在を確認する。また、不意をつかれても対応できるように訓練を怠らない。
 そして常人には理解できない滅茶苦茶な論理で行動し、事件を解決していく。

 このピンクパンサーシリーズ、続編が作られるそうだが、実に嬉しい。
 ドタバタ喜劇が少ない中、貴重なシリーズであるし、クルーゾーはスクリーンの中に永遠に生き続けていてほしいと思うからだ。

★あらすじ
 フランス代表チームが中国代表に勝利した直後、フランス代表を率いるイヴ・グルアン監督が何者かに殺される事件が発生する。そして混乱の中、彼が身につけていた高価なダイヤの指輪“ピンクパンサー”が消えてしまう。捜査を指揮するドレイフェス警視は、意外にもドジなクルーゾー警部を捜査に抜擢する。そうして世間の注目を彼に集中させ、自分はのびのびと捜査を進めて手柄を独り占めにしようという魂胆だったのだが……。(ALL・CINEMA・ONLINE 解説より)


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