平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ルパン 愛する者を失って

2010年03月10日 | 洋画
 19世紀ものというのは、なかなか興趣をそそられる。
 百歳以上生きている魔女・カリオストロ伯爵夫人。
 王家の宝。宝のありかを示す十字架。秘密結社。催眠術。仮面舞踏会。

 「ブラザー・グリム」などで描かれる中世の風景も魅力だが、現代からはあまりにかけ離れていて、まさにお伽噺のような感じがある。
 だが19世紀というと現代にも近く、自動車や鉄道が走り、サラ・ベルナールという有名な女優の名前も出て来て、中世よりもわれわれにとってリアリティがある。
 子供時代に読んだルパン、ホームズが活躍する時代というのも親近感がわく理由かもしれない。

 さて映画「ルパン」。
 活劇があり、19世紀の怪しい感じもあって、なかなかの娯楽作。
 だがフランス映画ということもあり、人間もしっかり描いている。
 以下、ネタバレ。
 
 王家の宝の謎が解け、クライマックスが終わった所で意外な展開。
 何とルパンが愛した妻のクラリスがカリオストロ伯爵夫人に殺され、子供のジャンを奪われるのだ。
 愛するものをすべて失ったルパン。
 ここから彼は虚無の生活を送ることになる。
 仮面を被り、心を閉ざし、<怪盗紳士>という役割を演じ続ける。
 実は愛に飢えているのに、<自分に関わったものはすべて悲劇に遭遇する><誰かを愛しても必ず失われる>という思いから人を愛せないのだ。

 これでルパンという人物像が掘り下げられた。
 単なる快男児、伊達男ではなくなった。
 ルパンは愛を求める代わりに、美術品や宝石を求めている。
 「同じ人からは二度と盗みません。特に美しい女性からは。だから今夜盗んだ物は明日お返しします」と華麗に振る舞うルパンだが、心の中は哀しく孤独でしょうがない。

 作品は人物を掘り下げることで、深みが出て来るんですね。
 ラストもなかなか深い。
 カリオストロ伯爵夫人に操られた成長したルパンの息子・ジャンがオーストリアの皇帝を爆弾で殺そうとするのだ。
 これは、20世紀の第一次世界大戦の開始を思わせるエピソード。
 ルパンはそれを間一髪阻止するが、現実の事件と遭遇させることで、ルパンとこの物語が俄然リアリティを持ってくる。
 カリオストロ伯爵夫人との戦いが今後も続きそうなニュアンスも。
 なかなか上手いラストだと思う。



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