平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第40回「君を置きて」~彰子、激怒! これから女性たちの逆襲が始まる気がする

2024年10月21日 | 大河ドラマ・時代劇
「露の身の風の宿りに君を置きて塵を出でぬることぞ悲しき」

 一条天皇(塩野瑛久)退場回である。

 寒くても薄手の衣を纏い、「民の心を鏡とした」一条天皇。
 敦康親王(片岡千之助)を次の東宮にと望みながら、かなえられなかった一条天皇。
 そんな一条天皇が死に際して何を思ったか?
「君を置きて塵を出でぬることぞ悲しき」
 思ったのは彰子(見上愛)のことだった。

 前回、惟規(高杉真宙)も辞世の句を詠んだが、その内容も悲しかった。
 基本、人生は悲しいもの……。
 人は泣きながら生まれ、涙を流して死んでいく。
 一条天皇の目からもひと筋の涙……。

 まひろ・藤式部(吉高由里子)の創作は今後老いと死を描いていくことになるのだろう。
 だが、その前に描いておかなくてはならないのは「罪」。
 最近のまひろの頭の中には「罪」というテーマが渦巻いている。

 道長(柄本佑)は敦康親王を排して、敦成親王を東宮にするという罪を犯した。
 道長にとって権力維持は良き政治をおこなうための手段であるが、
 権力を使って敦康親王を排した罪は変わらない。
 その罪はどのように道長に返って来るのか?
 ………………………………………………………………

「塵」の世界では人々は元気だ。

 居貞親王(木村達成)は即位して三条天皇に。
 権力を得てイキイキとしている。
 道長の言いなりにはならないと息巻いている。

 清少納言(ファーストサマーウィカ)は道長の横暴に激怒。
 敦康は苦労しないで生きていくのもいいかもしれないと定めを受け入れているが、
 彰子への思いはどうなのか?
 光源氏は桐壺帝が亡くなった後に桐壷更衣の所に忍んでいった。

 和泉式部(泉里香)は「罪のない恋などつまりませんわ」
 赤染衛門(凰稀かなめ)は「道険しき恋こそ燃えるのでございます」

 妍子(倉沢杏菜)はあれも欲しいこれも欲しいと贅沢三昧。

 まひろの娘・賢子(南沙良)は双寿丸(伊藤健太郎)に出会った。
 このふたりは、まひろと直秀(毎熊克哉)と同じような関係になるのだと思う。
 歴史は繰り返す。

 そして彰子。
「なにゆえ、わたくしに一言の相談もなく、敦成を東宮にお決めになったのですか!?」
「父上はどこまでわたしを軽んじておいでなのですか!」
「中宮など何もできぬ」
「なにゆえオンナは政に関われるのだ?」
 この思いにまひろ直伝の新楽府の政治理論が加わって、彰子は政治にどのように関わっていくのか?
 おそらく彰子の行動が道長に返ってくる罪になるのだろう。

 さまざまな思いが渦巻く宮中。
 話数も残りわずかになって来たが、これらをどのように収拾していくのか?

 今後、女性たちがたくましくどんどん自己主張していく気がする。
 現に彰子、清少納言、妍子は反道長だ。
 和泉式部、赤染衛門の言葉も道長の言葉に対するカウンターだった。
 光源氏が晩年、女性たちに相手にされなくなったように、
 道長も女性たちに総スカンを食らうのかもしれない。

 選挙特番のため次回は19時10分からのオンエア。


※追記
 ちなみに僕が好きな辞世の句は十返舎一九のこの句だ。

「この世をば どりゃおいとまに せん香の 煙とともに 灰左様なら」

 死を感傷ではなく笑い飛ばしている。
・おいとまにせん→せん香
・はい左様なら →灰左様なら
 と掛けている所も上手い。

「この世をば」で思い出すのは──
 道長の句「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」だが、
 十返舎一九はこの道長の句を意識しているのであろうか。

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4 コメント

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「朗読会」と双寿丸 (TEPO)
2024-10-22 00:23:47
タイトルバック前、冒頭の『源氏物語』朗読会
敦康:「藤壺は光る君のことを愛おしんでいたと思うことにします」
道長:「たとえ藤壺の思いを得たとしても、光る君は幸せにはなれなかったかと思えますが。不実の罪は必ず己に帰ってまいりますゆえ」
このやり取りは、まさに「藤壺女御:光源氏=彰子:敦康親王」の比例式に自分から乗ってきた敦康に対して道長が釘を刺した場面。
この道長の言葉は、後に光源氏が妻「女三宮」と彼女に懸想した「柏木」との間に生まれた不実の子「薫」を我が子として育てることになった次第を指しているようです。
以前にも言及した公式ガイドブックを元にしたネタバレ予想情報によれば、これは道長が執筆中の未公開原稿を先読みしたいわば「ネタバレ」だったようで、当該予想情報によれば、勝手に原稿を読んだ道長を責めるまひろとの間の一悶着が示されていましたが、実際のドラマではそれは省略され、まひろが「はっとした」表情で道長の顔を見ただけでした。
ともあれ、朗読会で閉じられたテキストは「藤裏葉」、つまり光源氏の栄華絶頂、女三宮、柏木、薫が登場する「影」の部分が展開する直前までを描いた巻。
「華やかで、しかも恐ろしいの」との感想を述べた一条天皇は、やはり桐壺帝に感情移入していたのでしょうか。
和泉式部と赤染衛門―彰子の言葉どおり「衛門先輩」まで和泉式部に同調するとは私も思いませんでした―は、単純に光源氏と藤壺女御との恋物語の迫力にハマっていたのでしょう。
「罪が己に帰って」くる「影」の展開を知っているのは、道長とまひろのみ。

>賢子は双寿丸に出会った。このふたりは、まひろと直秀と同じような関係になるのだと思う。
双寿丸の正体は「武士」でした。
賢子を救った結果、おそらく恋愛に発展するというベタな展開かと思いますが、清盛や頼朝が登場するはるか以前の時代である以上、いとの言うとおり「身分違い」。
双寿丸はオリキャラであり、無論まひろ以上に出世する賢子と結ばれることにはならないでしょう。
宮廷から宿下がりしてきたまひろと鉢合わせする場面で終わっていましたが、直秀や周明と交際した経験のあるまひろは身分にとらわれることなく双寿丸と相対することでしょうね。
双寿丸は賢子をはじめまひろ一族と「刀伊の入寇」とを関連づける存在となるのではないかと予想します。
おそらく彼は隆家の麾下で刀伊撃退の戦いで活躍し、ことによると戦死するのかもしれません。
返信する
平安文学から江戸文学へ 貴族社会から武士の時代へ (コウジ)
2024-10-22 08:06:48
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>道長が執筆中の未公開原稿を先読みしたいわば「ネタバレ」だった
そうなんですね。
シナリオあるいはプロット上であったものを演出の段階でカットしたのでしょうか。
このシーン、それぞれの感想とリアクションが面白いですね。
来年の「べらぼう」も文学まわりの話になると思いますが、平安との江戸文学の比較が楽しみです。

双寿丸は賢子に外の世界を見せてくれるのでしょうね。
賢子は外の世界、庶民の暮らしを知って宮廷に入っていくのでしょう。
賢子の成長が楽しみです。

「刀伊の入寇」「武士の活躍」は貴族社会の終わりの象徴であり、今作は雅な世界の終わりを予感させて幕を閉じるのかもしれません。
まさに「もののあわれ」です。
返信する
アホみたいですが。・・・ (megumi)
2024-10-22 10:53:38
コウジさん おはようございます。

女とは馬鹿なもので
今回は、塩野瑛久さんが演じる一条天皇の気品有る麗しさに見惚れるばかりでした。

演技力も確かな美貌の芸歴12年の男優さんが、今まで埋もれていたことが不思議です。
オーディションで決まったそうですが、よくぞ選んでくれたと思います。
「役は人を作る」と言いますから、彼にとっても幸運なことでしたね。

ストーリーも含めて楽しみな大河ドラマとなりました。
終盤に向けて、陰鬱にならないことを願います。
返信する
確かに美しい! (コウジ)
2024-10-22 13:21:51
megumiさん

いつもありがとうございます。

塩野瑛久さん、今回は閨で彰子を横たえるシーンが美しかったですね。
吉高由里子さんはXで「CGみたいだ」とポストしていました。

そんな塩野さん、今はテレビ朝日系の金曜ドラマ「無能の鷹」に出演されていますね。
頼りない劣等感のかたまりの新入社員役ですが、テロップを見るまで塩野さんだとわかりませんでした。
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