大学生の権田原美帆(谷村美月)と小坂圭一(勝地涼)が出会って、心通わせるシーンが好きだ。
自衛隊のヘリコプターのことで話が弾むふたり。
圭一は思いきって自己紹介する。
「俺、小坂圭一。君は?」
「……」
美帆は答えない。
圭一は、美帆が<自分のことを警戒しているのだ>と思い、<少し話したくらいで名前を聞くなんて気安すぎる。ナンパみたいだ>と考える。
だから「ごめん、いいんだ」とごまかす。
気まずいふたり。
駅に着くと、そのまま別れて、別々に歩いていく。
すると美帆。
「あのっ……」
「?」 ふり返る圭一。
「ごんだわら……」
「?」
「権田原美帆っていいます」
やっと名前を答える美帆。
そして、圭一に名前を言わなかった理由を話し始める。
このせりふがいい。
「権田原美帆っていいます。名字を言うとみんな笑うし、ゴンちゃんとかっていつも言われてて、それ、やっぱりちょっとイヤで。大学デビューで心機一転しようと思ったけど、やっぱりゴンちゃんで、しかもあたし、田舎者だからいつもキョロキョロしてて、何か浮いてて。で、さっき名前聞かれて、一瞬、ウソ言おうと思ったんですけど、すぐにウソは出て来ないし、そんなことでウソつくのなんて、親に対して申し訳ないな、とか思ってたら、言葉が何も出て来ないというか、頭が真っ白になって……。ごめんなさい、不愉快な思いをさせて」
何という誠実な言葉だろう。
たどたどしいが、美帆の必死に伝えようとする思いが伝わってくる。
いいせりふというのは必ずしも明快でなくていいんですね。
的確でキレのある必要はまったくない。
逆にたどたどしくて無器用なくらいの方が、伝わることがある。
この長い無器用な美帆の言葉を黙って聞いていた圭一も誠実だ。
普通なら、「一体、何が言いたいんだ?」と口を挟みたくなるのに、じっと聞いている。
美帆に正面から向き合おうとしている。
だから彼はこう返事をする。
「笑わんよ、そんなことで俺は。軍オタ(←圭一は軍事オタクなのだ)の話、ちゃんと聞いてくれて、うれしかったし。笑わんよ、美帆ちゃん」
圭一は、先程話した<自衛隊のヘリコプターの話>を美帆が真剣に聞いてくれたことが嬉しかったのだ。
だから、美帆の言葉にも真剣に向き合った。
こんなふたりだから、絆ができないわけがない。
「よろしく美帆ちゃん」
と、言った圭一に対し、美帆は
「はい」
と、笑顔で答える。
昨日も書いたが『阪急電車 片道15分の奇跡』には、生きていく上で大切なことがたくさん盛り込まれている。
『阪急電車 片道15分の奇跡①』はこちら
自衛隊のヘリコプターのことで話が弾むふたり。
圭一は思いきって自己紹介する。
「俺、小坂圭一。君は?」
「……」
美帆は答えない。
圭一は、美帆が<自分のことを警戒しているのだ>と思い、<少し話したくらいで名前を聞くなんて気安すぎる。ナンパみたいだ>と考える。
だから「ごめん、いいんだ」とごまかす。
気まずいふたり。
駅に着くと、そのまま別れて、別々に歩いていく。
すると美帆。
「あのっ……」
「?」 ふり返る圭一。
「ごんだわら……」
「?」
「権田原美帆っていいます」
やっと名前を答える美帆。
そして、圭一に名前を言わなかった理由を話し始める。
このせりふがいい。
「権田原美帆っていいます。名字を言うとみんな笑うし、ゴンちゃんとかっていつも言われてて、それ、やっぱりちょっとイヤで。大学デビューで心機一転しようと思ったけど、やっぱりゴンちゃんで、しかもあたし、田舎者だからいつもキョロキョロしてて、何か浮いてて。で、さっき名前聞かれて、一瞬、ウソ言おうと思ったんですけど、すぐにウソは出て来ないし、そんなことでウソつくのなんて、親に対して申し訳ないな、とか思ってたら、言葉が何も出て来ないというか、頭が真っ白になって……。ごめんなさい、不愉快な思いをさせて」
何という誠実な言葉だろう。
たどたどしいが、美帆の必死に伝えようとする思いが伝わってくる。
いいせりふというのは必ずしも明快でなくていいんですね。
的確でキレのある必要はまったくない。
逆にたどたどしくて無器用なくらいの方が、伝わることがある。
この長い無器用な美帆の言葉を黙って聞いていた圭一も誠実だ。
普通なら、「一体、何が言いたいんだ?」と口を挟みたくなるのに、じっと聞いている。
美帆に正面から向き合おうとしている。
だから彼はこう返事をする。
「笑わんよ、そんなことで俺は。軍オタ(←圭一は軍事オタクなのだ)の話、ちゃんと聞いてくれて、うれしかったし。笑わんよ、美帆ちゃん」
圭一は、先程話した<自衛隊のヘリコプターの話>を美帆が真剣に聞いてくれたことが嬉しかったのだ。
だから、美帆の言葉にも真剣に向き合った。
こんなふたりだから、絆ができないわけがない。
「よろしく美帆ちゃん」
と、言った圭一に対し、美帆は
「はい」
と、笑顔で答える。
昨日も書いたが『阪急電車 片道15分の奇跡』には、生きていく上で大切なことがたくさん盛り込まれている。
『阪急電車 片道15分の奇跡①』はこちら
書かれていることの意図があまりよくわかりませんが、
もしそう本当に考えていらっしゃるのなら、喉頭炎さんはとても立派な方ですね。
本当に素敵なカップルの誕生の瞬間シーンだと思います。
フラフラと圭一・権田原美帆で検索していたら、こちらのブログにヒットしました。
先にちょっと否定的なご意見があったので、ついコメントさせていただきました。
僕も映画を見て原作を読みました。
いいシーンですよね。
逆に美帆があの名前だったからこそ、ふたりは心を通わせることが出来たともいえますし。
劣等感みたいなマイナス要素がプラスに働くことがあるんですね。
この映画が大好きで本当によく観ています。
現在私は横浜に住んでおりますが、神奈川県に引っ越す前は大阪市に住んでいて、阪急電車にもよく乗ったものでした。特に今津線はあの車窓が好きでして。
圭一と美帆の関学大生オタクカップルのぎこちなさ微笑ましさが印象に残ってまして、何だかいいもんだなあと画面を眺めています。
本当に良い作品でしたね。
コメントありがとうございます。
実際の「阪急電車」をご存じだと、リアリティは一層違うでしょうね。
うらやましいです。
思い出したのは、アニメ「響け!ユーフォニアム」。
この作品も、宇治の電車が主な舞台として登場しますが、いずれここに行ってみたいと考えています。
「ユーフォニアム」の作劇は「阪急電車」の影響を受けているのかもしれません。