平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

どうする家康 第28回「本能寺の変」~さらば狼。ありがとう、わが友。

2023年07月24日 | 大河ドラマ・時代劇
「本当に俺の代わりをやる覚悟があるのならやってみろ」

 こう信長(岡田准一)に挑発された家康(松本潤)。
 だが、結局できなかった。
 代わりをやる覚悟はあったが、家康にはやさしさがあり、信長と強い絆で結ばれていた。

 木彫りの兎は家康のやさしさの象徴だ。
 これを前にして家康は葛藤する。

 お市(北川景子)は信長の孤独と家康への友情を語った。
「兄を恨んでおいででしょう? 私も恨んでおります。
 兄ほど恨みを買っているものはこの世におりますまい。
 兄はあなたに手を出しません。
 あなた様は兄のたったひとりの友ですもの。
 あれほど哀れな人はおりません。
 兄はあなた様をうらやましいと思っているはずです。
 弱くてやさしくて皆から好かれて、
 兄が捨てさせられたものをずっと持ち続けているのですから」

 お市様、信長のことをよく理解しているな。
 家康とお市のみが信長の良き理解者だった。

 やさしさと友である信長への思い。
 結果、家康は思い留まり、家臣たちにこんなことを語った。
「情けないが決断できぬ。
 ここまで精一杯用意して来たが、今のわしには到底成し遂げられぬ。
 無謀なことで皆を危険にさらすわけにはいかん。
 すべてはわしの未熟さ」

 これを受けて家臣たち。
「我らとて、お力になれず申し訳ございません」
「いずれ必ず天下を取りましょうぞ」
 いい家臣だな。
 本音で語り合える主従でもある。

 本能寺での信長の死を知って逃亡する家康。
 信長のことを思い出して、
「あなたが地獄を見せてくれた。
 あなたに食らいつき、あなたを越えなければならないと思った。
 この弱い私が生きのびて来られたのはあなたのおかげ。
 さらば狼。
 ありがとう、わが友」
 …………………………………………

「信長ーっ! 信長ーっ!」
「家康ーっ! 家康ーっ! 家康はどこじゃ!?」

 互いに求め合っているふたり。
 何だ、このふたりの関係は!?

「家康はどこじゃ!?」と叫んだ信長は最後に家康に会って、覚悟のほどを確かめたかったのだろう。
 お前に地獄を引き受ける覚悟があるのか? と。
 同時に家康に会いたかったのかもしれない。

 だが出会ったのは光秀(酒向芳)。
 上手いですね、この見せ方。
 自分を襲ったのが家康だと思っていたら実は光秀だった。
「お前かー! お前に覚悟があるのか、金柑頭!」
 信長としては拍子抜けだっただろう。
「やはりお前に覚悟はなかったのか?」
「兎め。相変わらず甘いやつだ」
 と思ったのだろうが、同時に救われた気持ちになったのかもしれない。
 なぜなら、覚悟はしていたが、
 家康の憎しみを受けて死んでいくのはやはりつらいことだから。

 家康の場合は喪失感。
 失ってわかることがある。つまり、
「弱い私が生きのびて来られたのはあなたのおかげ」という思いと
「かけがえのない友だった」という思いだ。

 こうして信長の思いは家康に引き継がれた。
 瀬名(有村架純)や退場していった人たちの思いも引き継いで、
 家康は歩んでいく。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 最高の教師~水曜日のカンパ... | トップ | 排除の論理~維新・馬場伸幸... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お市を語り手にしたこと (TEPO)
2023-07-24 16:50:34
>光秀に関しては「来たのはお前かよ?」って感じかもしれませんね。
>「光秀に横取り」された家康に対しても「やっぱりお前は甘いな」と

これ、先週のコウジさんですが、概ね予想どおりの展開でしたね。
ただ、信長・家康の「相思相愛」がここまで全開となることは想像を超えていました。

ご指摘どおり、ここで大きな鍵となったのはお市との会話だったと思います。
総じてこの場面全体が「抑えられた色気」に満ちていたように感じられました。

康政:焼け木杭に、ってこと?
忠勝:分からん。(←いかにも忠勝!)
万千代:ほおー。そういう間柄!?(←万千代は新参だった)

互いの身の上についての情報交換があって「正室を取るつもりは、もうありません」。
そこからお市の表情が曇って「そう」、それから「兄を恨んでおいででしょう?」以下に続きます。
無論、お市の表情が曇ったのは瀬名を失った家康の心の傷の深さを知り、「兄を……」につながったのだと思います。
しかし、「正室を取るつもりは、もうありません」に対する反応―今からでも家康とならばと思っていたのに―でもあったと見るのは深読みしすぎでしょうか。

家康の瀬名への思いを知って市が身を引く寸前まで二人が結ばれる流れだったとする大胆な設定は物議を醸していましたが、今回このシーンのためだったのかと思いました。
思えば、長政公認のもとで市が上洛した家康を訪問した場面でも、「許容限度一杯の色気」が感じられました。
その場にもいた阿月が命に替えて急を告げたのは信長ではなく家康でした。

ともあれ、お市と家康との会話は家臣たちもそれぞれの思いで聞いていました。
結ばれることは無いとは分かりつつも滲み出てくる慕わしげな思いを背景とするお市の言葉は、家康のみならず家臣たちの心深くまでも入っていったことでしょう。
だからこそ、家康が本能寺襲撃中止の決定を告げても、家臣たちは皆家康の思いを暖かく理解して受け入れてくれたわけです。

ところで、先週も書きましたが「光秀」という可能性を信長も家康も考慮していなかった点は依然としてツッコみたくなります。
しかしながら、襲撃中止の決定によって家康は命拾いしたとも言えますね。
仮に予定通り襲撃していたならば、信長を討つことはできたかもしれませんが、高々伊賀衆500の手勢では明智の大軍の前にはひとたまりもありません。
京ではなく堺にいたからこそ、「伊賀越えの大難」があるにしても脱出することができたのですから。
返信する
お市の存在 (コウジ)
2023-07-25 08:56:09
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>「正室を取るつもりは、もうありません」に対する反応―今からでも家康とならばと思っていたのに―でもあったと見るのは深読みしすぎでしょうか。

こう思わせてしまう所が上手いですよね。
まさに行間から滲み出る想い。
そしてwikiで調べましたが、お市が柴田勝家に嫁ぐのは清洲会議の後なんですよね。
家康のことはあきらめて、勝家に嫁いだと解釈できそうです。

信長の客観的な語り手として、お市を登場させたのも上手いですよね。
この役割を果たせるのはお市しかいません。

そしてお市の3人の娘たちが、後に家康に関わって来ます。
特に茶々は──。
大坂冬の陣で、家康は信長の問いかけた「覚悟」をしなければならないんですよね。
夏の陣で助けたことは家康のやさしさであり、外堀を埋めたことは計略ではなく、「もう頼むから戦わないでくれ」という思いからなのかもしれません。

こうして見て行くと、今作のお市は裏で物語を動かしている人物(バラエティで言えば「裏まわし)なのかもしれませんね。
返信する

コメントを投稿

大河ドラマ・時代劇」カテゴリの最新記事