今日弘仁九年三月二十四日は大師が藤原朝臣常房の為に願文を書かれた日です。
写経や造仏が先祖供養に大変功徳になることがわかります。
「済恩寺願文
弟子藤原朝臣常房等、十方一切三宝に帰命したてまつる。恭んで聞く、蛇身牛口は万象を・・占に開き(蛇身の伏犠と牛首の神農は全てを八卦によって占った)、李下桑中は重玄を道易に述ぶ(孔子の「道」老子の「易」。「玄のまた玄は衆妙の門なり(老子)」といい万物の根源は玄の亦玄といった)。しかれどもなお理、元気(万物の根源)に滞り、義すなわち眼前のみ、未だ因縁を談ぜず。誰か三世を識らん。あに若かんや、垂蓮の金体は五鏡を懸けて独り尊く(蓮華の上に坐されている金剛界智法身は五智に輝き)、覚眼の玉豪は六大を呑んで相を構う(本覚の常住法身の白毫の光は全てを構成する地水火風空の六大を含んでいる)。四量万品を薫じ(慈悲喜捨の四無量心は全てのいきものを薫じて)、十度群生を抜く(十波羅蜜は衆生を救済する)。生死はその仁恩に憑り,幽明はその大造(大恩)を仰ぐ。
伏して惟んみれば先考参議従四位上兼行右衛の督、気を山河に稟け、運はすなわち魚水なり(魚が水を得たように幸運にめぐまれる)、寵外氏に厚く(母方の舅に厚遇され)、位銓衡を践む(人物を調べて位を授ける)。何ぞ図らん四蛇交々戦って五蘊空に帰せんとは。弟子等早く蓼毒(深い憂悶)に丁りて雨に哽び霜に咽ぶ。屺陔(きがい・はげ山の重なり)嶊けやすく、・・慕飽き難し(この箇所不明)。天に訴うれども及ぶことなく、地を叩けどもあに足らんや。風月忽ちに転じて周忌奄ちに至れり。
謹んで弘仁九年三月二十四日を以て先考の奉為に、刻桃薬師如来の像七躯、日月遍照夾侍菩薩両躯、護世天王の像四躯、並びに法華経一部八巻、最勝王経一部十巻、金剛般若経、薬師経、阿弥陀経、多心経各々一巻、堂幡華鬘各各二十六旒を造り奉る。粋容の𠑊相(仏像の厳かなお姿)動くことなくして真に契い、定貌の慧身言わずして理を得。智剣利くして煩悩断え、妙理深くして業網除く。苦因を宝幡に表し覚果を蔓蘂に示す。
伏して願わくはこの善業を奉じて冥かに先考の慈をたすけ、妄雲を願風にかかげて真月を心空に朗らかにし、法界に安住して円寂に悠遊せん。傍ら有情に及ぼし同じく無戯の殿に昇らん。」
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