講で坂井師が紹介された、空海「秘蔵宝鑰」(加藤純隆、加藤精一訳)(角川ソフィア文庫)を何度か読んでいるところです。あとがきによい文章がありましたので、ご紹介します。
「多様な価値観に取り巻かれた平安初期の人々は、右往左往して、あやうく流されそうになったのであるが、空海の十住心思想によって人々は混乱から立ちなおり、それぞれの考えを生かしながら大きくまとまって真実への道を進むことができたのである。
こうして考えてくれば明らかなように、本書は人々の心を密教へいざなう宗教書というよりも、思想・宗教の多様な時に、惑い乱れる人々の生き方に大きな共通の光の存在することを知らしめて、人心に安心と秩序をもたらせた、人間学の指導書というのが正しいように思われる。宗教の対立が激化し、そのために知らず知らずのうちに争いに巻き込まれて、家を焼かれ国を追われる戦争状態が、世界の各地で起きているのである。こうした時に、より広い視野に立った考え方が、いかに大切かという問題を、本書を読み、空海の思索に触れながら考えたいと思うのである。」(加藤精一先生の文章)
初めて福聚講で高野山の結縁灌頂に参加した際に、同シリーズの「三教指帰」を購入し、何度も読みました。また、坂井師が案内されたように(以前)5月に同シリーズで「般若心経秘鍵」が出版されたので購入して読んでいるところです。丁寧に訳されており、分かりやすいので、ありがたく何度も繰り返し読みたいと思っています。
1000年以上も前のお大師さまのご本がこんなに分かりやすい訳で読めて感激です。お大師さまの志と偉業を想い、また今日の日本の状況を考えますと、お大師さまのお教えを今日再び学ぶことに大きな意義があるように思えてなりません。
(了)