福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国八十八所の霊験その49

2014-06-18 | 四国八十八所の霊験
 30番から31番竹林寺までは7キロ弱です。30番からどんどん南下して高知市街地にはいります。竹林寺のある五台山への登り口はいつも迷います。逆打ちのときは特にわかりません。五台山の下の学校の周りを何度もまわったこともあります。
2回目の時です。細い登り道をやっと見つけて登ろうとすると近くの枇杷の木の何十匹もの蝉が驚いて飛び立ち一匹が眼鏡の中まではいりこみあばれます。びっくりしました。
あわてて蝉を払うときに眼鏡をアスファルトの上に落としてしまいました。こんなところで眼鏡がこわれては万事休すと真っ青になりながら拾いあげましたが不思議なことに全く瑕一つついていません。無事でした。ありがたいことでした。
 ここは聖武天皇が唐の五台山で文殊菩薩を拝まれている夢をみられ、命を受けた行基菩薩が神亀元年(七二四)五台山に似た山容を見つけ、栴檀の木に文殊菩薩を刻んで安置したのが竹林寺のはじまりで、後に弘法大師が巡錫され、札所に定められたところです。山全体が竹林寺の寺域であったとおもわれ堂々たる寺容です。聖武天皇が夢にみたという中国の五台山竹林寺も鎌田茂雄「華厳経物語」によるとふしぎな創建談があります。「山西省台海鎮西南6キロの竹林寺村の西に在るのが五台山竹林寺である。・・唐の大歴4年(769)南岳衡山を出発した法照は、一条の白光が山から下りてくるのを見た。これこそ文殊菩薩の光であることを知った法照は、その光を尋ねていくと谷川がありその北の石門に青衣を着た二人の童子が立っていた。一人は善財(華厳経入法界品の主役)といい、一人は難陀といった。・・(こうして法照は竹林寺を創建した)(広清涼伝)」とあります。


ご本尊が文殊菩薩で学問寺として維持されてきただけあっていつも凛とした霊気をかんじます。法性法親王「四国霊場御巡行記」では「文殊の智慧の五台山、山の景色や入海のほとりに多き浜千鳥、詠に富める所なり。」とあります。



17年には本堂で若い僧が護摩を焚いていました。 ここの大師堂のお大師様は直接お顔を拝せます。ありがたいかぎりです。

20年7月の逆打ちのときは靴擦れと筋肉痛の足をひきずってあるきつつ人生も遍路もつまりは無始以来の罪障消滅のためではないかと覚った気持ちになり大師堂まできました。そしてお大師様のお顔を拝したときはっとしたのです。そのお顔がはるか遠くを見ておられました。お大師様は私に「人生も遍路も足元の罪障消滅だけではなかろう」とおっしゃっている気がしたのです。そのときは一瞬、人生には滅罪のみでなく生善という積極面もあるぞとおっしゃっているかのように考えたのですがそれも皮相な考えでした。

20年の逆打ちのときはさらに歩きつつ21番まできたときハッと気がつきました。遍路もその目的は、現世利益、罪障消滅・滅罪生善、福智増長、先亡得脱、報恩謝徳、自利利他などさまざまなものがありますがこれら全てを包含してなおかつまだまだそこにとどまらない広く深い限りなく玄妙な行が遍路なのだとお大師様が教えておられる気がしました。なにかはとても言葉で表現できません。とにかく玄妙不可思議な世界が厳然として無限に広く深く我々遍路の前に横たわっていると言うしかないのです。川崎大師等のお蔭を頂いている人は「何度もお参りする毎に有難さが増してくる」といいます。人生もお詣りも遍路も何回もやればやるだけ玄妙な世界にきつ゛かされるのでしょう。
 原発事故で放射能汚染という何万年後もの後世に負の遺産を作ってしまった以上、それを消せるくらいのプラスの遺産を残さねば申し訳ないと思っていたのですがなかなか確たるものがつかめないでいました。しかしここのお大師様を思い出し、そうだお大師様のこのお顔は、弥勒菩薩下生の56億7千万年後まで、『虚空尽き 涅槃尽き 衆生尽き』るまで生きとし生けるものを残らず済度してやるぞと云うお気持ちを示しておられたのだと気が付きました。無限の衆生を済度するとの御覚悟なのです。われわれも生まれ変わり死に変わりして無限の後世の生きとし生けるものの為に少しでもつくすという覚悟を持って人生を送ればいいのです。

20年7月の逆打ちのときはここからの降り道が何本にも分岐していて迷いました。迷っていると片方の道の下の方から鈴の音が聞こえてきました。お遍路さんがあがってきたと思ってその道へ進むとそこが正しい道で麓に続いていました。しかし登ってくるはずのお遍路さんは来ませんでした。あれはたしかにお大師様のお助けの鈴の音だったと思います。

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