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日々の恐怖 10月22日 パニック状態での決断

2015-10-22 18:46:25 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月22日 パニック状態での決断



 昔の職場の同僚Mさんから聞いた話です。
Mさんは関西に住んでいて、毎年お盆は中国地方にある田舎に車で帰っていた。
 その年は生憎翌日も仕事があったので、日帰りすることにした。
墓参り等を済ませて実家を出た頃には夜になっていた。
 帰りは高速を使うつもりだったが、既に帰省ラッシュが始まっていたので、夜とは言え混んでるかも知れない。
それで手元にあった抜け道マップを見ると、ちょうど良い道があったのでその道を行くことにした。
後から考えると、これが大失敗だった。
 抜け道は山の中の一本道で街灯もあまり無く、対抗車も先行車・後続車も全く無いため、本当に一人ぼっちで走っていた。
 暫く走って、道の遥か先に何だかよく分からない白いものが現れた。
その白いものは段々増えていき、やがて白い集団になった。
白い集団は道を塞ぐ様なかたちで、ふらふらゆらゆらと動いていた。
 それらは一見白い服を着た人間のように思えたが、何か違う感じもした。
Mさんはここで初めて、

“ もしかしてあれ、幽霊かも・・・。”

と思った。
 Mさんがビビっている間も、車はゆっくり進んで行く。
だが、近づいても、その白いものが人間なのか幽霊なのか判断は難しかった。
 もう、白い集団は完全に道を占拠してしまっている。
Mさんに残された選択肢は、

・幽霊だと判断して突っ切る。
・人間だと判断して止める。

の二つだった。
パニック状態のMさんは迷った。

 そして、Mさんは迷った末、結局、止まることにした。
止めた途端、白い集団は車をワッと取り囲み、窓を叩いたり車を揺らしたりした。

「 ひえぇぇぇ~!」

と車内でガクブルしてたところ、新たに白い人影が現れた。
 その人影をよ~く見ると、白衣を着た医者と看護婦だった。
実は、白い集団は道の脇を下りた所にある、○○病院の患者達だった。
 医者から、

“ 時々患者を外に出して散歩させるんだけど、昼間は様々な理由で避けたい。
この道は、夜になると車は通らなくなるので、散歩させるにはちょうど良い。
今まで散歩中に誰か人や車に遭った事は無かった。
あなたが初めてです。”

等と説明されたそうな。
 Mさんは笑いながら、

「 タネを明かされるとなぁんだとなるけど、なにも警戒してない状態で、深夜にあんな集団に出くわしたら、普通はパニックになるわな。」

と話してくれた。
 そのMさんが真面目な顔で最後に言ったのが、この言葉だった。

「 でも、後から思い返してみて、一番怖かったのはあのときの判断だな。
あのとき幽霊だと決めつけてアクセル踏んでいたら、間違いなく何人か轢いていた。
あのとき止まって良かった、本当に良かったと思うよ。」










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