大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 10月24日 インドの料理人

2015-10-24 18:12:20 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月24日 インドの料理人



 インドの料理人Aさんが子供の頃に体験したという話です。
店長による通訳越しなので、細部は聞き間違えている部分もあるかもしれないけれど、そこはご容赦を願います。

 Aさんが10歳くらいの頃、夕暮れ時に友達4~5人と河原で遊んでいたときのことです。
いい加減遊び疲れてきて、そろそろ帰ろうかって話になりかけてたとき、河の上流から歩いてくる人がいるのに気付いたそうだ。
子供の目から見ても上質な服を着てて、優しそうに微笑んでいる品の良さそうなおじさんだったらしい。
 その人は手に大きな器を持って近づいてきて、

「 みんなお腹が空いているだろう? 
これを召し上がれ。」

そう言って、茶色くて潰れた楕円形みたいな、ふわふわしたもの(Aさん曰く、日本の饅頭みたいな感じ)を一人一人に手渡してくれた。
それはほかほかと温かくて、とても美味しそうな匂いがしたという。
全員にそれを配ると、その人はにこにこしながら、また上流に向かって歩いていってしまった。
 現代の日本なら小学生だって怪しむところだろうが、インドはそのあたりまだまだのどかな文化だそうで、近所の人が子供たちに食べ物を配ったりするのはよくあることなんだとか。
 けれど友達の一人が、去っていく男性の後姿をじっと見つめながら、小声だけど真剣な口調で、

「 おまえら、それ絶対に食うなよ。」

と言ってきた。
 腹が空いてたAさん達は、

「 なんでだよ、美味しそうじゃん、食べようぜ。」

と喚いたのだが、

「 あれは××××だ(ヒンディー語でランク4の悪霊を指す言葉)。
すぐに寺院に持っていって納めてこないとやばい。」

そう言ってみんなを引き連れて、街にある寺院に向かった。
 Aさん達も××××のことは知っていたけれど、さすがに半信半疑だったらしい。
けれど寺院の敷地に入った途端、持っていた饅頭らしきものが煮え滾るように熱くなり、みんな慌てて地面に放り投げたという。
 全員ビビリまくっているところに、寺院から何人もの僧侶が飛び出してきて、

「 大丈夫か?誰も口にしてないな?」

と聞かれ、そのまま寺院の中に連れて行かれてお祓いのようなことをされ、家の人を呼んでもらってそれぞれ帰されたそうだ。
 後日、Aさんがその友人に、

「 どうしてあれが××××だとわかったんだ?」

と聞いたところ、

「 だってあいつ、河の向こう岸から歩いて渡ってきたんだぜ。 
どう考えても普通じゃないだろ。」

 全員、男性が河の上流から歩いてくるように見えていた(その友人も上流のほうを向いていたはずだった)のに、実際には俺達全員河の向こう岸を見つめていたんだと、その友人は言った。
 Aさんは、

「 それ以来、日が落ち始めたら急いで家に帰るようにしてるんだ。」

と言って、笑いながら厨房に戻って行った。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------