日々の恐怖 10月28日 オレンジ色の子供用自転車
オレはチャリで通勤していたことがある。
今は原付に乗っているが、チャリからそれに変えたのは妙な理由があったからだ。
オレの勤め先は駅のすぐ側にある。
便がいいので、いつも駅の自転車置き場にチャリを止めていた。
有人の自転車置き場ではあったけど、隅っこには放置自転車が何年もホコリを被ってるようなところだった。
ある時、オレが帰ろうとすると、隣にホコリを被った自転車が止まってた。
サドルの横に、油性ペンでAnriと書かれたオレンジの子供用自転車。
Anriのiの点をハートで書いてあって、いかにも子供のって感じだった。
オレは、
“ あれ、おかしいな?
ホコリ被ってるってことは放置自転車だよな。
何で隣にあるんだろう?”
と思いつつ、家路についた。
次の日も同じようにその自転車置き場に止めた。
そしたらまた、帰りにはそのオレンジのチャリがある。
それが何回となく続いた。
もう嫌になってきて、その次の日から一番入り口に近いところに置くようにした。
誰かのイタズラだったら、事務所から見えるところに置くのが得策だと思ったからだ。
そしたら帰りにはまた隣にそれが来ている。
しかも、今度は100均で売っているようなチェーンロックで、そのチャリと俺のチャリとを繋いでとめられている。
鍵もないし、あったとしても開きそうにないような錆びたやつだった。
管理してるおっちゃんに聞いても、妙な人はいなかったし、おっちゃんが動かしたわけでもないらしい。
おっちゃんも首をかしげつつ、チェーンロックを切るためにペンチを探しに行ってくれた。
戻ってくるまでに用を足したくなって、オレは自転車置き場のトイレを借りた。
オレは、
“ ああ、やれやれ・・・。”
と思いながら出てきて、おっちゃんがチェーンロックを切ってくれていたので、自分の自転車に乗って家に帰った。
次の日、放置自転車の中を探すと、オレンジの自転車があった。
タイヤもホコリ被ってたし、誰かが使っている感じもしなかった。
気味が悪いし、ちょうどボーナスも出たしで、専用の駐車場が使える原付を買って、それっきり自転車置き場には行っていない。
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