大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 10月30日 茶封筒(2)

2015-10-30 19:36:30 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月30日 茶封筒(2)



 もともとその家はバブル期にSさんという人が購入した家だった。
Sさんはどこかの中小企業の社長さんをしていたようだったが、不景気のあおりを受けて会社が傾き、ある日家族揃って失踪してしまった。
爺さんが言った。

「 督促状だの、特送が来てよぉ。
裁判所からのやつなんぞ持っていくと、奥さんが疲れたような、申し訳なさそうな顔をして、

“ またですか。”

って言うんだよ。
俺も長いことやってるけど、あの顔は忘れられねぇや。
こっちが悪いことをしてるような気分になる。」

 その後、家は売りに出され、1年後には買い手がついた。
その家で奇妙なことが起こりだしたのは、ちょうどその頃だった。
 爺さんが書留を持ってその家に行ったとき、呼び鈴を押すと階段を下りてくるくような音が聞こえた。
 すぐに扉が開くと思いしばらく待ってみるが、一向に開く気配が無い。
また呼び鈴を押すと確かに物音はするのだが、返事がない。
 シビレを切らした爺さんは不在通知をポストに投げ入れて帰ったところ、翌日再配達の依頼が来た。

「 昨日はお忙しかったようですね。
何度も呼んだんですが聞こえなかったみたいで。」

と嫌味たらしく言うと、

「 昨日は日中は出かけていた。
何度もご足労をかけて申し訳ない。」

と返ってきた。

「 あれ、昨日の昼間、誰かいたような物音がしたんですが?」

家の人は怪訝な顔をすると、

「 え?昨日は日中はずっと留守にしていましたよ?」
「 そうですか?
誰か2階から降りてくるような音と、あと中でばたばたと歩き回っているようでしたが。」
「 うち、主人と二人暮らしですし、ペットも飼っていませんの。」

気味が悪そうにそう告げると、パタンとドアを閉めてしまい、それからしばらくして表札が外された。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------