日々の恐怖 10月25日 店長の話
前にバイトしていたカラオケ店での話です。
郊外にあるせいか平日の深夜ともなると客足がほとんどなく、その日は2時ごろに最後の一組も帰って、店内には俺一人。
閉めの作業もほとんど終わってボーっとしてたら突然ルームからのコール音が。
壁に部屋番号が書かれたパネルが備え付けてあって、発信した番号が点滅するからどこからか一目でわかるようになってるんだけど、点滅してるのは部屋番号の存在しない一番右下。
怖くて立ち尽くしてると30秒ぐらいで切れた。
ビクビクしながら、とにかく残ってる厨房の掃除を急いでしてたら、今度は無人のはずの受付から男の野太い声がして俺半泣き状態。
後日、店長に冗談っぽく話したら他にも不可思議な体験をしてる人がいるらしく、中には11番ルームに入れないって言う人もいた。
確かにその部屋だけ床が浸水したみたいに捲り上がってて、モップ掛け難いとは思ってたけど。
他にも誰もいないはずの部屋から壁を引っ掻くような音がしたり、夜になると自動ドアが勝手に開閉したり、挙句にはお客さんにも心霊カラオケ呼ばわりされたり。
それで、新人バイトの女の子と社員が夜勤シフトで入った時のこと。
一階奥にある普段は鍵がかかってる物置部屋から誰かが走り回るような音がして、新人の子は泣いて仕事にならなくなった。
その子は次の日には辞めちゃって、店長も流石にヤバいと思ってかお祓いを頼んだ。
そしたら足音がしたっていう物置部屋には、お札がいっぱい貼られて開かずの間になってしまった。
お祓い以降不可解な現象も収まって落ち着いたけど。
そして俺が辞める前、最後に店長とシフトが被った日だった。
思い出話をしてたらこの店の心霊現象の話になった。
「 あの日、マジ怖くて本気で辞めようと思いましたよ。」
「 でも辞めないでいてくれて良かった。
あのとき辞められてたら、代わりなんて俺ぐらいだもん。」
「 夜勤もやって、次の日も昼のシフトとか地獄ですもんね。」
その後も雑談を続けてたら、店長が少し真面目な顔になった。
「 あ、俺君には話しとくわ。
他の人には言わないでよ。
前にここでお店やってた店長、店の目の前で死んでるんだよね。」
「 やめてくださいよ。
新しく入ってきたバイトには、絶対そういうこと言ったらだめですからね。」
いつも冗談ばっかり言う人だったから軽く受け流したけど、本当のところどうだったんだろう。
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