大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月2日 雨降り

2015-10-02 18:47:56 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 10月2日 雨降り


 数年前のことだ。
電車の荷棚に誰かが置き忘れたらしい一冊の単行本が目に入り、目的の駅につくまで暇だったもので、なにげなくその本を手にして読んでみた。
 タイトルは今は覚えていないけど、たしか禁断の呪文のなんたらと書かれた本だ。
中には、恋がかなうとか、受験で合格するとか、いろんな呪文が書かれていた。
興味が出て、駅に着いてもそのままその本を持って出た。
 休みがてら公園のベンチに座り、その本をパラパラっとめくっていると、雨乞いの呪文というのが目にとまった。
そういえば数日間まったく雨が降らず、その日も快晴で青空が空一面に広がっていた。
 じゃあ試しにコレでもと思い、そこに書かれた雨乞いの呪文というのを唱えてみた。
すると、今まで快晴だった空に、みるみるうちに真っ黒な雲が広がって来て、辺り一面、昼とは思えないような暗さになり雷まで鳴り出した。
そしてザァーッとものすごい豪雨になった。
 公園の屋根のあるところに避難し驚いていたのだが、30分ほどすると、ものすごい勢いで降り続いていた雨はピタッと止み、空を覆っていた黒雲もサーッとどこかに消え去って、またさっきまでのような快晴の空に戻った。

“ この呪文の効果なのか?それとも偶然?”

 呆気にとられていたのだが、もしも本の呪文が本物だったらという思いもあって、帰りの電車の中でも、いろいろな呪文が書かれているのを見ながら、金持ちになれる呪文とか唱えたら・・・、とニヤニヤしながら帰宅した。
 いざ、家に帰ってカバンの中を探してもあの本が無い。

“ もしかしたらあの電車に置き忘れてしまった???”

なんとなく無意識に電車の荷棚に読んでいた本を置いてしまったような気もする。
 数日後、その日も晴天だったのだが、急にまたあのときのように空が真っ暗になり、30分ほど豪雨が降り続いたあとピタッと止んで快晴の空に戻った。
そのときから、

“ ああ、きっとあの本を拾った誰かが、また呪文を唱えたのだろうな。”

と思うようになった。









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