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日々の出来事 12月30日 星 新一とマタンゴ

2018-12-30 10:08:20 | A,日々の出来事_





 日々の出来事 12月30日 星 新一とマタンゴ





 今日は、星 新一が亡くなった日です。(1997年12月30日)
星 新一はSF小説家で1000編以上の短編作品を残し、“ショートショートの神様”と呼ばれていました。
 星 新一は1926年、東京の本郷で星薬科大学の創立者で星製薬の創業者である星 一を父として生まれます。
地元で成長し旧制東京高等学校に入学、不愉快な寮生活を経験します。
 星 新一は、後年、この寮生活を“不愉快きわまることばかりで、いまでも眠る前に思い出し、頭がかっとなったりする。入ってみてわかったことだが、この学校はとてつもなく軍事色が強く、教師だけならまだしも、生徒たちの多くもそのムードに迎合していたので、うんざりした。着るものはもちろん、食うものもだんだん不足してくるし、学校は全部が狂っているし、まったく、どうしようもない日常だった。”と述べています。
 東京大学農学部農芸化学科を卒業後大学院に進学しますが、父である星一が急逝したため中退、経営が傾いていた星製薬を継ぎましたが破綻してしまいます。
破綻直後、病に臥せっている中でレイ・ブラッドベリの“火星年代記”を読んで感銘し、SF作家の道を歩み始めます。
 そして、星 新一は、三島由紀夫、石原慎太郎が参加していた“空飛ぶ円盤研究会”に参加、このとき知り合った柴野拓美らと日本初のSF同人誌“宇宙塵”を創刊、その第2号に発表した作品“セキストラ”が“宝石”に転載されてデビューを果たしました。
その後、日本SF作家クラブの創設に参加し、作家クラブの一員として多数の作品を発表することになります。
また、ウルトラシリーズの“ウルトラQ”の企画会議に加わりアイデアを提供、さらに特撮映画“マタンゴ”の原案を担当しています。





    特撮映画“マタンゴ”


 この映画は、ヨットで漂流し無人島に流れ着いた若者達の恐怖の体験を描いたホラー映画です。
それも、無人島に漂着したのですが、協力して脱出なんてどこ吹く風、自分のエゴを剥き出しにする人間の心の醜さを描いた映画です。
それに追加して、キノコを食べたら恐ろしいキノコの化け物“マタンゴ”になってしまうのです。
 天本英世がマタンゴ怪人で出てくるのですが、キノコなので天本英世とは分かりません。
もっとも、天本英世はノーメイクでも怪人の凄い人です。
映画のストーリーは言いません。
さて、何人がこの島から脱出できたのでしょうか?








  マタンゴ
















☆今日の壺々話










 星新一の年賀状


今年もまたご一緒に九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。
これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速29.7キロメートルのマッハ93。安全です。
他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。

                     星新一







 星新一が尼崎在住の小松左京へ送った手紙



小松左京が星新一から手紙をもらうと、いつも宛先に「尻崎」と書いてある。

『 なんで「尻」なんて書くのだ。』
『 だって「七」より「九」のほうが大きいからいいじゃないか。』
『 バカをいうな、「七」、「七」と書くんだ。』

二度繰り返したのがまずかった。

次に届いた手紙の宛先は 「屁崎」。

















    全国各地にある“ありがたいもの”の発祥過程






 空想科学小説が好きな人が集まって開かれる“SF大会”という催しがあります。
元々はアメリカ発祥ですが、日本でも行われています。

2001年の大会で、映画“2001年宇宙の旅”に出てきた“モノリス”という黒い直方体が映画の描写に忠実に再現されて会場に飾られました。

始めのうちは単なるモニュメントであり、記念撮影や待ち合わせに使われていましたが、そのうち誰かが願い事を書いた名刺を根元に置きました。

それに気付いた人が同じように名刺を置きました。
次に、小銭も置かれるようになりました。
何時の間にか賽銭箱が置かれ、御神酒や御供物が周りを埋め始めました。

次の日、注連縄が掛けられました。

銀色の風船が周りの空間にも供えられ、御神体と化したモノリスには願い事を書き込んだ名刺が絵馬のように突き刺されるようになり、賽銭を投げ入れ、柏手を打ち、何かを祈念する姿も見られるようになりました。

そして、それは、いつしか“モノリス大明神”と呼ばれるようになりました。

日本人は、こんなのが大好きな民族です。















お見舞い




 ジョンは、病気で入院している友人のハリスのお見舞いに行った。

「 ハリス、どうなんだ?具合のほうは?」
「 う…、ぐ…。」

体中のあちこちにチューブでつながれたハリスは、満足にしゃべることもできなかった。

「 気の毒になぁ……。
おい、息子さんに何か伝えたいことがあったら、この紙に書いてくれ。
俺がちゃんと持って行くからな。」
「 ぐぅっ!!!」
「 どうした!ハリス!どうした!」

彼は急いで走り書きしたかと思うと、急にぐったりし、そのまま帰らぬ人となってしまった。


 お通夜の日、ジョンはハリスの息子に会った。

「 ハリスは死ぬ直前にこれを残した。
よっぽどあんたに伝えたかったらしい。」
「 え……、これが僕への伝言ですか?」

その紙には、こう書いてあった。

『 酸素チューブから足をどけろ 』


















天国の控室





 ここは通称「天国の控室」、正式名称は「国立終末介護医療センター」である。
比較的裕福で身寄りの少ない重病患者が、終の棲家として選択する医療機関だ。
ただ、すでに危篤状態になっている患者はここに入院することは無い。
なぜなら、寿命を全うするまでの期間、たとえそれが数日であろうと、本人の意思で至福の時間を過ごす事を目的としているからだ。
 人によっては数年間の長期入院になる事もある。
幸せな時間を1日でも多く過ごしたいという欲求が、その命を永らえるのかもしれない。
N氏もそんな患者の一人であった。

「 Yさん、ちょっとこちらへ来てくれないか。」
「 はいN様。」

そう応えたのは、N氏が入院してからずっと付きっ切りで介護してきたY看護婦だった。

「 もうどれくらいになるかな…。」
「 約4年7ヶ月になりますわ。
正しくは4年6ヶ月と28日8時間46分…。」
「 ははは、君はいつも正確無比だな。」
「 恐れ入ります、N様。」
「 私にはもう近々お迎えが来る。
君には本当に世話になった。」
「 そんな気の弱いことをおっしゃってはいけませんわ。」
「 いや、分かるんだよ、自分の事は。」
「 N様がそんな気持ちになってしまわれると、私が担当の先生に叱られます。」
「 そんな医者、私が怒鳴りつけてやる!わっはっは。」
「 うふふ…、患者様から気を使われるなんて、看護婦失格ですわね。」

「 ところで、私が死んでからの事なんだが…。
私にはこれまで苦労の末築いた財産がある。
それを君に相続してもらうわけにはいかんだろうか?」
「 唐突なお話ですのね。
しかし私には財産をいただく権利はございません。
それにN様もご存知のように…。」
「 そう、君はロボットだ。
だが、ロボットが相続してはいけない法律はないだろう。」
「 いいえN様、法律の問題ではなくて、私にとってはその財産が無意味なのですわ。」
「 そうなのか、私の財産は君には何の価値も無いということなのか…。」
「 申し訳ございません、私には物の価値を認識するデータがプログラムされていないのです。」
「 …確かにな、金や不動産や贅沢品は人の欲望が造り上げた物。
君には無用か…。」
「 ご好意には感謝いたします。」

「 Yさん、今だから言えるが、私は起業には成功したが良い家庭は築けなかった。
家族ほったらかしで仕事に没頭し、愛想をつかした妻は一人息子を連れて家を出て行った。」
「 そうだったのですか。」
「 だが、今私はとても幸せだ。
君のお陰で最高の死を迎えられそうだよ。」

その時、一人の男性が病室に入ってきた。

「 お、お前は…。」
「 父さん、久しぶりです。」
「 今更名乗りをあげても、お前達には財産はやらんぞ!」
「 父さん、母さんはもう5年前にここで亡くなりました。
最期まで父さんを愛していましたよ。」
「 そ…、そんな人情話は通用せん!」
「 僕は財産が欲しくてここに来たんじゃありません。
本当のことを、お話しに来たのです。」
「 何だと?」
「 母さんは家を出たあと、大変な苦労をして僕を育ててくれ、大学にまで入れてくれました。
お陰で僕は思う存分自分の好きなロボット工学の勉強をすることができました。」
「 ロボット工学…。」
「 そうです。
実は、この施設の介護ロボットはすべて僕が開発したものなんです。」
「 では、このYさんも…。」
「 ええ、今まではロックがかかっていたので、お話できませんでした。
申し訳ございません。」
「 父さんは先程、彼女のお陰で幸せだと言っていましたね。
どうしてだか分かりますか?」
「 ああ、彼女は親切でよく気が利いて私の好みも分かってくれていて、まるで…。」
「 まるで?」
「 …かつての私の妻のように…!」
「 そうです、Yには僕の覚えている限りの母さんの性格やしぐさをプログラミングしてあります。
ただ、父さんの好みまでは僕は知りませんが。」
「 そ…、そうだったのか。」
「 母さんは本当に最期まで父さんを愛していました。
これを聞いてください。」

息子はY看護婦の耳たぶにそっと触れた。

「 お父さん、お久しぶりです。
もう、お互いに昔の事になってしまいましたね。
あの時は突然出て行ってしまってごめんなさい。
ご苦労されたでしょうね。」

Y看護婦はN氏の妻の声で話し続ける。

「 お父さんのお仕事の邪魔になってはいけない。
私達が出て行かなければいけないって勝手に思い込んでしまって。
でも大成功されたんですものこれで良かったんだと思います。
私が先に逝くことになってしまったけれど、本当に愛していました、さようなら…。」

 その後、幾日かしてN氏は天寿を全うしこの世を去った。
病室には1通のメモ書きがサインを添えて残してあった。

『遺言 私Nの全財産を Y看護婦の開発者に贈与する』
















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