バルセロナ。スペイン第2の都市で、カタルーニャ州の州都。強い民族意識を持ち続け、何度もスペインからの独立の叫びをあげて中央政府との対立が絶えない、600万人の大都市だ。
ただ、今回はそうした政治的側面はひとまず置いておき、文化的芸術的なバルセロナを歩いてみた。まずは建築巡礼。街歩きの中で著名な建築を訪ねるなら、グラシア通りが一番だ。北側の交差点で目に飛び込んでくるのがカサミラだ。
カサミラが完成したのは1910年のこと。アントニ・ガウディ作の新しい建築を見て、街の人達は驚きの声を上げた。それより4年前に完成していたカサバトリョが、パステルカラーに彩られた優しさを伴うものだったのに、新しいビルは褐色に覆われ、その形は嵐の海辺に押し寄せる怒涛の波を連想させる荒々しさに満ちていたからだ。
人々はこの建築にラ・ペドレラ(石切り場)という、潤いのかけらもない呼称をつけた。それほど意外性に満ちたものだった。
ガウディは「直線?そんなものは自然界には存在しない」という哲学を持っていた。その自然に調和する建物、自然と調和する街づくりのためには、こうした無限にくねり続ける形態が必然だったのかも知れない。
ファザードの壁面は、彫刻家カルロス・マニが石膏模型を作り、これを石工たちが現場で実践した。壁面は各階ごとに前後に波打って突き出し、へこむ。
そして鍛鉄製の手すりが、岩肌に絡む海藻のようにからみつく。この手摺りは、ガウディの仕事に深くかかわった建築助手ジュジョールによるものだ。
中庭への入口は、鉄製の門扉になっている。まるで珊瑚を思わせる形だ。
入って見上げれば、青い空が目に染みる。
2,3階からも鉄の手摺りを間近に見ることが出来る。これはくず鉄をリサイクルして造られたものだそうだ。
天井にもうねるような形が刻まれている。ここにもあるのは曲線だけ。
自らが水中に漂っていて、見上げた水面に描かれた波紋を見つけたような気持ちにさせられた。
現在でもここに住んでいる住民がおり(世界遺産に住んでいる人がいるんだ!)、出入り禁止のエリアがあるが、一部見ることの出来る部屋もあった。
20世紀初頭のブルジョアの住まいを再現したという。
確かに古き良き時代の雰囲気も感じられるが、やっぱりおしゃれ。
なぜか、クリムトの「接吻」の絵が飾ってあった。