新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

階段紀行・日本 鎌倉最古級の杉本寺には、他では出会わなかった苔の階段がある

2023-06-13 | 階段紀行・日本

 僧行基が734年に創建したと伝えられる鎌倉最古級の寺杉本寺には、唯一無二の階段がある。

 苔の階段。ここの参道は2段階に分かれていて、最初は普通の階段だが坂の途中から苔に覆われた階段が出現する。

 今は、ここは通行禁止となっており、脇から上る形になっているので、しっかり苔に覆われていて階段かどうか判別しにくいくらい。

 なぜこのような苔階段が出来たのだろうか。それは階段に使われた石に由来しているという。

 使用されているのは鎌倉石といい、火山灰が堆積して出来た凝灰岩の一種。これは柔らかくて加工しやすいという利点がある。ただ、組織が密でないため、年月とともにすり減りやすいという。そこには苔が着きやすく繁殖しやすいことから、長年の間に苔の階段が出来上がってしまったものらしい。

 これだけ全面的に苔だらけなので、独特の風合いを醸し出す。私が行った日は雲1つない晴天だったが、曇りや雨模様の日などは一層しっとりした風情になるのではないかと思わせる場所だった。

 途中にあった仁王門の仁王像は、運慶作とも伝えられる。本堂(最初の写真)は、かやぶき屋根のひなびた建築だった。

 

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階段紀行・日本 鶴岡八幡宮の階段は、約800年前将軍暗殺の事件現場だった

2023-06-10 | 階段紀行・日本

 鎌倉と言えば、もっとも有名な神社は鶴岡八幡宮。本宮は1191年、源頼朝が征夷大将軍になる前年に造営された。

 そこにつながる大階段は61段の石段。

 1219年1月27日にはこの階段で事件が起きた。三代将軍源実朝が、甥の公暁に暗殺された現場がここだった。

 今ではいつ行っても観光客が押し寄せる鎌倉最大の観光名所となっていて、事件現場などというイメージは全く残っていない。

 それで、少し粘ってみたものの人のいない階段の風景を撮影することは出来なかった。ただ、上から見下ろすと結構な急角度であることがよくわかる。

 階段の手前にある舞殿。ここは静御前が義経を慕って舞を演じた若宮廻廊跡に建つ。今では結婚式の会場として利用されていて、何度も式のシーンに出会ったことがある。

 荏柄天神社は、12世紀の創建で、学問の神様菅原道真を祀る。福岡の太宰府天満宮、京都の北野天満宮と並ぶ日本三大天満宮の1つとされる。

 境内は国の史跡となっており、従ってこの階段も史跡に入るということだ。すっきりとした直線の急階段が心地よい。

 すこし近づいてもう1枚。こちらは鶴岡八幡宮と違ってゆったりと参拝が出来た。

 でも、本殿にはたくさんの絵馬がかけられていた。やっぱり学業成就の願いに訪れる人が多いことがよく分かった。

 

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階段紀行・日本 鎌倉・長谷地区の甘縄神明宮で、夏の夜に浮かび上がる一筋の階段

2023-06-06 | 階段紀行・日本

 鎌倉の夏に行われるイベントの1つに「長谷の灯かり」というものがある。大仏を始めとした長谷地区の名所をライトアップする催し。その1つが甘縄神明宮のライトアップだ。

 神社に続く直線の階段。その両脇に光が置かれ、夕やみに沈む周囲の森の暗闇と対照的に光が階段を照らし出す。

 まさに、神社への「一筋の道」が、階段の上にある社へと参拝者を導く。

 上り切ると、紫にライトアップされた本殿が玄妙な姿を現す。都市である鎌倉とは思えぬ深層の世界に迷い込んだような気持になった。

 それが、参拝を済ませて下りになると、心なしか階段が少し明るく広がったようにも思えた。

 なお、長谷の灯かりの最大の目玉はやはり大仏様の姿。

 昼にはこのような穏やかな姿で迎えて下さっていたが、

 夜には、一層の威厳にあふれた御姿に変貌して、より一段と有難みを増したように見えてしまった。

 

 

 

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階段紀行・日本 鎌倉・明月院では、心にしみる重厚な階段に出会った

2023-06-03 | 階段紀行・日本

 あじさい寺としても知られる明月院は、2500株ものアジサイが植生されており、これからのシーズンにはしっとりとした美しさが展開される。

 その境内に走る階段は、いかにも古寺を思わせる風情たっぷりの造りだ。

 一段一段は長年のうちにすり減り、それだけに歴史を重ねた重みを感じさせる重厚感に満ちている。

 しかし、それだけに踏みしめるたびに、鎌倉というかつては一国の幕府が存在した過去を再認識させるような趣さえ、足元から伝わってくる思いだ。

 それでも、前方から明るく光が降り注ぐと、温かな気持ちが湧き出してくるのを感じる階段だった。

 私が初めて訪れたのは、秋の季節だった。脇道には紅葉がきらりと光を反射してまぶしい。

 本殿の、丸くくりぬかれた窓「悟りの窓」からは、奥の庭園の紅葉が、円に縁どられたようにして眺められた。心にしみる情景だった。

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階段紀行・日本 千葉・勝浦の神社で年1回展開されるひな人形階段

2023-05-30 | 階段紀行・日本

 千葉県房総半島の太平洋側先端近くにある勝浦市で開催されるビッグひな祭り。全市内各所に合計3万体ものひな人形が飾られる。その中でも特に華やかなのが、遠見岬神社の石段に飾られるひな人形だ。

 近づいてみると、一体一体が赤毛せんの敷かれた石段上に所狭しと並ぶ。この神社の総階段は60段。その階段すべてを埋め尽くす1800体もの人形が勢ぞろい。

 人形はここだけではなく、市内各所に展開される。市芸術文化交流センターでは幅広いひな壇にオールスターが豪華に集結だ。

 覚翁寺という寺の山門前では、ここにも臨時に出来たひな壇に600体が並び、春ののどかな日差しを一杯に浴びる。

 市内外の各地から寄せられた人形は、各家庭に並べられた時の温かい思い出を抱えながらこの地に集まったもの。それが、この日差しの中で再び人々の目に触れて、それぞれの懐かしい記憶を蘇らせているのかもしれない。

 公的な場所だけではない。個人の住宅でも思い思いに工夫を凝らす。ここでは2階への階段を活用してかわいらしいひな壇を造り上げた。

 こうした展示は夜も続く。照明に浮かび上がる階段ひな人形は、昼とは全く違い、荘厳ささえ感じさせる光景だった。

 この1800体の人形は期間中毎朝、市民が総がかりで並べ、夜にはいったんかたずけて翌朝にまた展示するという、大変な苦労の下に成り立っているという。

 

 

 

 

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