旧市街はライトアップされるというので、その風景をカメラに収めようと思ったのだけれども、一向に陽が傾かない。ヨーロッパの初夏は本当に日が長い。
以前、パリ・ヴェルサイユ宮殿の花火を見に行ったときは、日没が午後10時半で花火開始が11時。パリに戻る終電車に間に合うかどうか焦ったことがある。
5月後半のイタリアはそれほどではないものの、暗くなるのは9時ころなので、その前に夕食を摂ることにした。
7時なら店は開くだろうと、B&Bオーナーお勧めの店に行くと、オープンは7時30分とのこと。困った顔をしていると、「オープンまで中に入って待っててもいいよ」。ビールを頼んで中で待たせてもらった。
地元特産料理の食事の終わったのが8時40分頃。そのままチェントロに向かってゆくと、
サン・ヴィジリオの山の方がいい感じに夕焼けになってきた。
旧市街広場にやってきた。洗礼堂の屋根に天使像があるが、その像が茜色の空を背景に、まるでフクロウのような姿のシルエットになっていた。
横に並ぶ教会のシルエットも美しい。
燃えるような夕焼けが、そんなシルエットを見事に引き立たせている。日本国内ではなかなかこんな色の夕焼けにお目にかかったことがなかった。
コッレオーニ礼拝堂も暗い中に佇んでいる。
マッジョーレ教会の入口はライトアップされた。
入口のタンパンも照明に照らされて、柱の装飾と共に繊細な模様が浮かび上がる。
また、奥まった場所に位置しているため昼は目立たないドゥオモも、ファザードがライトアップされてちょっとうれしそうに輝いている。
振り向くと、ラジオーネ宮の通路の3つのアーチ越しに広場の向こう側に建つ図書館(旧ヌオーヴォ宮)が、照明によって際立って見えた。
チェントロのたたずまいは、昼とはまた違う美しさを見せる。そんな時間帯に立ち会うことが出来て幸せ。
ちょっとうれしい気持ちで宿に帰り、部屋から外を見た時、もう1つの夜景が目に飛び込んできた。
この宿が高台にあることは調査済みで予約したのだったが、夜の見晴らしまでは考えていなかった。バッサ(下の街)の街並みが何列にも真横に並んで、点灯された家々の照明が重層の光となって瞬いている。
思いがけないプレゼントをもらった気がした。