
前回紹介したように、マッジョーレ教会はまさにきらびやかな空間だが、そのきらびやかさにも負けない存在感を発揮している一角があった。
告解聴聞席。信者たちの懺悔などを聞く場所。黒光りする木製のものだが、各所に精密な彫刻が丹念に施されている。アンドレア・ファントーニの作品だ。

最上部にはまるでティントレットが描いたかのようなダイナミックな姿の聖人像。

脇には十字架を持った男性。

何人もの女性たちが控える。一つ一つの彫刻を眺めているだけで、時の過ぎるのも忘れてしまいそうだ。

それぞれに豊かな表情を湛える。

こちらには空飛ぶ天使。

かと思えば、戯れる無邪気な天使たちも。

ダンスしている!

細かなレリーフも各所に施されている。ぐるりと廻りながら観察しているうちに、20分もそこで過ごしていた。

教会の奥まった場所に、一人の音楽家の墓碑があった。ガエタノ・ドニゼッティ。

しなやかな女性の像が載せられたもので、最初は気付かなかったが、教会の清掃係の女性が指差しで教えてくれた。像はヴィンチェンツォ・ヴェラ作。

像の下に彼の肖像画が添えられていた。

墓石には7人の天使がいる。それぞれがドレミの7つの音叉を持っているのだという。その下にドニゼッティの名前が刻まれ、花が添えられたいた。
ガエタノ・ドニゼッティはベルガモ生まれで、19世紀前半のイタリアを代表するオペラ作曲家として、ロッシーニなどと並ぶ人気を博した。
イタリアだけでなく、パリやウイーンなどでも成功を遂げるが、40代後半から病を患い、50歳でベルガモに戻りまもなく永眠した。
代表曲に「愛の妙薬」「ドン・パスクアーレ」「ランメルモールのルチア」などがある。
彼の生家は、私が宿泊した宿のすぐ近くにあった。

また、こんな群像彫刻も飾られていた。

とにかく、外見とはまるで違う教会内部の豪華さに、まるで酔ったような気分で過ごした時間だった。