ボローニャの視覚的な特徴と言えば、市の中心部に建つ2本の斜塔だろう。
高いほうの塔がアシネッリの塔で97・2m。12世紀初頭に建設され、現在までの約900年もの間倒壊せずに立っている。ただ、西側に2・23mの傾斜がついている。
一方、低いほうの塔はガリセンダの塔。アシネッリの塔と同様に12世紀の建設で、60mの高さだったが、1360年に地盤陥没が起きたため危険となり、上部をすこしカットして現在は46・16mになっている。こちらは北東側に3・22mの傾斜になっている。
低いほうのガリセンダ塔でも、真下からだと相当に高く感じる。
13世紀ころにかけては、ボローニャには100本を超える塔が立ち、まさに百塔の街だったが、次第に地震や人災などで大半は倒壊してしまった。
それでもこの2本を含めて20本程度は残っているという。
ガリセンダの塔はダンテの「神曲 地獄篇」にも登場する。
「ガリセンダの塔は傾斜している方から見上げると、雲がその上を通るごとに手前に倒れてくるような印象を受ける・・・」。
ダンテはボローニャ大学で学んでおり、斜塔にも当時日常的に接していたことから、こんな描写が作品に登場することになったのだろう。
つまり、ダンテの時代からすでにこの塔は傾いていたということになる。
私が宿泊していたホテルは2本の塔のすぐ近くだったので、毎日街に出かけるときは斜塔の前を通る形になった。
直下で見るとアシネッリの塔の根元はこのくらい傾いている。
塔のヘリに腰掛けて読書する女性など、この周辺では毎日日常的な風景が展開される。
そんなわけで、ホテルの屋上からは斜塔が間近に眺められる。2本の塔がまるで肩を寄せ合って語らっているかのように見えるときも。
そして、夜明けのシルエットはちょっと神々しい感じも。
2本の塔の真ん中には街の守護聖人聖ペトロニオが街を見渡している。
夜、フィレンツェ散策から帰った時には、塔に挟まってライトアップされた聖人が、こちらに向かって「お帰り」と、手を振ってくれているように見えた。