アミアン大聖堂はロマネスク様式だった以前の聖堂が火事で焼失してしまったことを機に、1220年にゴシック様式で着工され、主要部分は1285年に完成した。
その後西正面の2つの塔は15世紀初め、交差部の尖塔は16世紀に完成、盛期ゴシックの代表作として現在もその威容を誇っている。
まずは外観から見て行こう。西正面には3つの扉口がある。右扉口は聖母マリアの扉口。中央にマリアが立つ。
脇の人像円柱を見ると、順に大天使ガブリエルが聖母マリアと向かい合っている。そう、この2人の姿は受胎告知の場面だ。天使がマリアに妊娠を告げる劇的なシーン。
その横も似たような形だが、これは妊娠を告げられたマリアがエリザベートを訪問するところ。
その他にもソロモン、シバの女王など旧約聖書の人びとが並ぶ。
中央の扉口は救世主キリストの扉口。美しき神と称されるキリスト像が中央にある。
そして左扉口は初代アミアン大司教である聖フィルマンの扉口だ。通常はこの扉口が開いており、ここから中に入る。
中央扉口の上を見上げてみよう。ここに描かれるのは「最後の審判」。
真ん中にカッと目を見開いたキリストがにらんでいる。広げた手には処刑の時に受けた傷跡があり、血まで流れている。とても恐ろしい!
まさにここでキリストが下す判定で天国か地獄かが決まってしまう場所だ。
そのアシストをしているのが、下中央に見える大天使ミカエル。秤を持って徳の重さをはかっている。
ああ、そんなもの計られたら私なんか即刻地獄だなあ。
2層目の人びとはよく見ると、中央から左側は着衣姿なのに、右側は裸。天国と地獄で待遇が完全に別れている。
面白いのは、ミカエルの持つ秤は天国側に重く傾いているが、右下にいるちっちゃな悪魔は地獄側に傾けようと下から引っ張っている。こんなユーモラスな像のある所も、当時の職人のウイットが感じられて滑稽だ。
気を取り直して、さらに上を見上げた。ずらり並ぶ人物像。ここは諸王のギャラリーと呼ばれ、22人の王冠をかぶった王たちが揃っている。盛期ゴシック建築の1つのテーマとなる形だ。
さらに上にはフランボワイアン様式のバラ窓。
また、南扉口に周ると、こちらにもバラ窓の付いた高いファザードがある。
扉中央には聖母子像。優しく幼子キリストを抱くこちらの聖母の方が柔和でほほえましい感じだ。
このように外壁全体には約4000人もの聖書にまつわる像が彫り込まれており、まさに「石の百科全書」と呼ばれている。