ピエンツァの町は前回紹介したように丘の上にある。それで、町から見下ろすと、オルチャ渓谷の見事な美しさが眼前に展開する。春5月中旬の渓谷は、緑のじゅうたんが果てしなく広がっていた。
小路を通って渓谷の見える場所へ移動した。
すると、薄曇りではあったが、周囲の広々とした田園風景が一気に目に飛び込んできた。
糸杉の並ぶ道の先に、まるでしつらえたかのような一軒家がポツンと佇む。
緑の草原は、まるで自らが光を放っているかのように輝く。
その風景が、どこまでもどこまでも続いている。
手前の林も、いい塩梅にアクセントをつける。
いつまで見ても見飽きない新緑の風景。これがオルチャ渓谷。
ただ、この風景は地域の人びとが牧歌的な景観を損ねないように、ていねいに土地を耕して維持されているものだ。
従ってこの世界遺産は「自然遺産」ではなくて「文化遺産」として登録されている。これも特筆すべきことだと思う。