(法隆寺ポスター より)
次に大宝蔵院に向かった。ここには私が最も会いたかった仏様がいる。百済観音菩薩立像。
一時、百済の国から伝来されたとされ、この名前が付いたが、国産のクスの木で作られており、7世紀中ごろの国内の制作と考えられるようになった。
(NHK8K国宝へようこそ より。 以下同様)
正面から見ると、本当にスリム。あくまでも細く屹立している。2mの体長は人間にすれば巨人の部類だが、全く威圧感は感じさせない。
柔らかな面差しで、見上げる者に対して「緊張しなくてもいいよ」と語りかけるかのように、わずかに口元をほころばせて見つめてくれる。
また、細いだけではなく、腹部あたりはほんのりと肉体の丸みを思わせるふくらみがある。
もっとも繊細なのは手。右手はすっと前に差し向けながら、指先を柔らかく包み込むように曲げている。これは「願いを聞きますよ」という与願印だろうか。
また、左手は水瓶を軽くつまんで下げている。
逆側から見てみよう。瓶は中指と親指で触れるか触れないか、くらいの繊細さで抑えているだけだ。絶妙な軽さ。
長く伸びた裾はどこまでも長く、足指よりも下まで延び、しかも前方に向けて大きなカーブを描いている。手などのしなやかさとは対照的に少し硬質で、リズミックなラインを形成している。
数ある仏像のなかでもこれほどの軽さとリズムとを兼ね備えた像は数少ないのではないかと、改めて感じることが出来た瞬間だった。
このような立体的でダイナミックな像を前からだけでなく両脇からもじっくりと見られるように展示されているので、とても有難かった。
多分修学旅行の時にはこの像も見たはずなのだが、全く記憶になかった。成人してから写真などでこの像の素晴らしさに気づき、いつかはちゃんと拝顔したい、と願っていたことをやっと実現させることが出来て、心からほっとした気分で像を後にした。