しばらく休載していた階段紀行を再開します。今回はパリ以外のフランス各地を巡ります。
フランス東部ナンシー市にあるナンシー美術館。この街はアールヌーヴォーの旗手エミール・ガレの出身地だが、そこの美術館で、まさにアールヌーヴォーの世界を立体的に表現したような階段に出会た。
まず上部からの眺め。中心にライト(光)を置いて、周囲を、曲線で覆いつくした手すりの円がぐるりと取り巻く。
その外側に配置された階も、決して直線ではなく、微妙にアールを描いてうねる。
らせん状に渦巻く上昇気流。一段一段が快い回転を刻む。
一階から見上げる。手すりの渦は高く高く、蛇の昇天図のようにどこまでも伸びて行く。
そして、ついには上空で輪を形成してしまう。
何度も上ったり下ったりしていたら、学芸員の人に不思議そうな目で見られてしまった。
それとは別に、2階から3階へ続く美しい別の階段も見つけた。白を基調として両側が外に柔らかくカーブする。中心の白い柱には所蔵作品が大きく掲げられている。
また、脇の壁や小さな空間にも作品が並べられ、階段全体の白と基段の赤とが絶妙な配合となって、空間全体を華やかなものにしている。
展示作品もバラエティ豊かだったが、それにも増して、入館して初めて出会う階段の面白さにひきつかられた美術館だった。