12月の夜サンジェルマン・デプレ地区を歩いていて あるショーウインドウを見かけた
ここは靴店 冬場だけに落ち着いた色のシューズが陳列されている
ただ日本でいつもみかける陳列法とは 全く違った形が目を惹く
まず一足ずつ並べているのではなく 片方の靴だけが並ぶ
それも互い違いに上下に並べられているうえ 一つとして平行にはなっていない
まるで木の実のように あるいは大きな葉に止まった蝶のように
ゆらりゆらりと 空中に浮かんでいる
照明も斜めからの光線で 商品には微妙な陰影までつけられている
「どうぞ これらの靴を 自由気ままに履きこなしてください」
そんなメッセージが 込められているのかもしれない
眺めているうちに ふと気が付いた
今は12月 そうこれは「クリスマスツリー」
今年一年を締めくくるとともに キリスト誕生を祝う月に
「心尽くしの感謝を込めた プレゼントにどうぞ」と
パリっ子に 語り掛けているんじゃないのだろうか
ジングルベルに気持ちを湧き立たせている 中年男の妄想が
そんな夢物語を思い浮かべさせる 夜の巷のウインドウだった