新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ベルニーニとローマ⑧ ベルニーニの彫刻は、甘美で妖しい恍惚の世界まで劇場空間として創り上げた

2021-03-02 | ベルニーニとローマ

次にベルニーニの残した「恍惚の像」に移ろう。

 テルミニ駅から地下鉄A線のレプブリカ(共和国広場)駅で下車してすぐ北にあるS・M・ヴィットリア教会に入る。

 主祭壇の左側礼拝堂に「聖テレジアの法悦」がある。

 聖テレジアは何回も神秘的な恍惚状態を経験したとされる修道女。その1場面を像として完成させたものだ。

 天上から降り注ぐ神秘の光を金色の棒で表現し、テレジアの半ば意識を失ったような夢と現実との境界線に彷徨う状況を、真っ白な大理石を使って掘り出している。

 また、礼拝堂全体を見渡すと、この恍惚の場面を両側のテラスから見つめる人たちがいる。この彫刻を注文した貴族の家族たちだ。こうして礼拝堂全体を劇場空間のように造り上げてしまったベルニーニの仕掛けに、唸らざるを得ない。

 もう1点の作品はトラステヴェレ地区のサンフランシスコ・ア・リーパ教会にある。テルミニ駅からならバスHでテヴェレ川を渡ってすぐのソンニーノ広場で下車、トラステヴェレ大通りから左手に曲がれば教会が見えて来る。

これが「ルドヴィカ・アルベルトーニ像」。

死の淵で苦しみながらも、父なる神との神聖な融合に歓喜する姿が、生々しくも甘美な世界ともとれる形で表現されている。

 こちらも白大理石で美しく、しばし見入ってしまった。

こうしてベルニーニは、勇壮なダビデ像から甘美なルドヴィカ像まで、さまざまな彫刻を様々な表現でこの世に送り出した。さらに、彼の活躍は続いてゆく。

 

 

 

 


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