新イタリアの誘惑

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東京探訪・樋口一葉編⑥ 美登利と信如、それぞれの旅立ち 酉の市の哀愁

2017-04-17 | 東京探訪・樋口一葉編

 「たけくらべ」の物語の後半、三の酉の日。美登利は仲間の前にそれまでとは全く違った、京人形と見まごうような服装で現れる。大島田に結った髪は、少女から女性へと艶やかに変身した美登利。
 しかし、彼女は「いやや、いやや。大人に成るのはいやなこと」と、涙を流す。


 酉の市が開かれるのは、国際通りの千束神社から見て南にある鷲(おおとり)神社。

 入り口には、見事な酉の市の大熊手が常時掲げられている。中に入ると、2つの一葉関係の碑が建っている。

 1つは文学碑。「たけこらべ」文中の酉の市の描写が、ここに記されている。

 また、「一葉玉梓乃碑」というものもあった。ここには、文学の師と仰いだ半井桃水に宛てた手紙が写されている。

 その筆跡は実に見事。流れるような筆運びが魅了する。

 この神社にはほかにも興味深いものがいろいろあった。

 正岡子規の句「雑とうや 熊手押し合う 酉の市」  

 また 其角の句 「春を待つ ことのはじめや 酉の市」

 酉の市には有名無名を問わず多くのの市民が集い楽しんだことがうかがわれる。

 神社中央にドカンと大きなおかめのお面。1mもある大きさで、額を撫でれば頭がよくなるなど、顔のそれぞれの部分に触れれば、異なったご利益があるという。それで、たまたま周囲に誰もいないのを幸い、顔中全部を撫でて、すべてが良くなるようお祈りしました(笑)。

 それに鷲の人形。この中に願いを書いて奉納する。絵馬の鷲バージョンのようなものもあった。


 昨年11月、二の酉の日。鷲神社に出向いた。晩秋の夕陽はまさにつるべ落とし。長い行列の後ろに並んでいると、あっという間に周囲が闇に包まれていく。
 神社前に到達するころには、すっかり夜の装いに変わっていた。

 境内につるされた提灯がとても明るく輝く。

 そして、参拝客のざわめきの中で、一際大きな歓声と拍手が響いた。縁起物の熊手を購入した客に対してのかしわ手の音だ。


 熊手の大きさはさまざまだが、購入客への拍手の大きさに差別はない。

 取り囲む人たちのどの表情にも、心なしか幸せの笑顔が広がるのが、とても印象的だった。

 歳末に向かってゆくほのかな寂しさと、老若男女入り混じって響きあう群衆のさんざめきとが入り混じって、一葉の時代にも通じる下町の心地よい哀愁を感じた夜だった。

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