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ぽかぽか春庭「音読みと漢字のツクリ。転注文字の『令』」

2019-07-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190706
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(1)音読みと漢字のツクリ。転注文字の『令』

 春庭コラムの中、漢字について書いたものを再録します。
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2006/06/23 金
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(43)音読みと漢字のツクリ

 今まで何気なく発音していたり、書いていたりしたことに、あれっと思って立ち止まり、日本語への興味をかき立てられたり、確認したりする機会が、脳内に生まれたなら、春庭、とてもうれしく思います。

 「音訓の規則って漢字のツクリに関係あるんですか」
という質問をp*********さんからいただきました。(2006/06/16)
 日本語の文字と発音に興味関心を向けてくださり、うれしいです。

 漢字は、成り立ちから、象形文字・会意文字・形声文字・指事文字・転注文字などがあります。(転注については後ほど解説)

 漢字のツクリ(旁)は、形声文字の音読みに関係しています。
 以下、p**********さんからの質問にお答えし、bbsに書き込んだ文を再録します。

<漢字の発音 haruniwa  2006-06-19 09:19:06  p********* bbsより>

 音訓の読みのうち、訓読みは、漢字の意味に日本語をあてはめたものです。
 中国の漢字「山」は、古代中国語の読み(発音)は「サン」、現代中国語の読みは「シャン」、意味は「土地がたいへん高くなっているところ」を表わしています。

 中国の漢字が日本に移入されたとき、日本語では「土地がたいへん高くなっているところ=やま」だから、「やま」と読むことにした。これが訓読みです。

 漢字は、「山」のように、ものの姿形からできあがった「象形文字」が基本です。
 「田」「川」も、「山」と同じく、土地の姿を絵にしたものからできた文字です。
 「鳥」や「馬」は、動物の形から文字が出来上がりました。

 二つの漢字の意味を足してできた漢字を会意文字といいます。
例)月と日があわさると、あかるいから、「明」。
  山のように大きな石があったら「岩」。

 指事文字は、一二など数を示したり、上下など位置を表わす文字。
 横棒ひとつあれば「一」、ふたつあれば「二」、みっつあれば「三」
 □のまんなかを、縦棒で区切れば「中」

 横棒のうえに、トをおけば、「上」、したに「ト」をおけば「下」
 これら、数や位置関係を表わした漢字は、非漢字圏の留学生にも意味が推測でき、覚えやすい漢字です。

 さて、ご質問の「音訓の規則って、漢字のツクリに関係あるのか」という点について。

 ほとんどの漢字は形声文字です。扁(へん)や冠(かんむり)などで、意味の部類を表わし、旁(ツクリ)で、発音を表わす。

 発音をあらわす「旁(ツクリ)」と意味の部類をあらわす「扁・冠・足・繞(ニョウ)」などの組み合わせ方を古代中国人が発明したので、漢字の種類は飛躍的に増えました。
 雨冠と言偏の漢字例をあげてみましょう。

<つづく>

2006/06/24 土
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(44)部首Kanji radicals

 形声文字、扁(へん)や旁(つくり)の組み合わせの例。
 雨冠と言偏の文字を出してみます。
 雨に関わるという意味を冠が表わし、発音を冠の下の部分の漢字が受け持っています。
 日本語の音読みの発音は、古代中国での発音なので、現代中国語標準語の発音とは異なります。

意味:雨に関係する
発音:ソウ→相であらわす
形声:霜→音読み「ソウ」(現代中国語の発音はシュァン)
訓読み:シモ  

意味:雨に関係する
発音:ム→務であらわす
形声:霧→音読み「ム」(現代中国語の発音はウー)
訓読み:きり

意味:言(ことば)に関係する
発音:ゴ→吾であらわす
形声:語→音読み「ゴ」(現代中国語の発音はユェ)
訓読み:語る=かた(る)

意味:言(ことば)に関係する
発音:ホウ→方であらわす
形声:訪→音読み「ホウ」(現代中国語の発音はファン)
訓読み:訪ねる=たず(ねる)

 以上のように、漢字の形声文字については、p**********さんが「関係あるのかも」とおっしゃるとおりです。
 「漢字のツクリは、音読みに関係している。ツクリが発音をあらわしている」

象形文字、会意文字、形声文字について解説したついでに、漢字の成り立ちについて、あとひとつ解説。

 「転注文字」って、どんな漢字でしょう。
 転注文字とは、元の意味から発展して新しい意味を持った漢字です。
 例をあげておきます。

1 「令」のもとの意味は「命令する」の「令」。呉音「リョウ」漢音「レイ」
 「律令りつりょう」は、「律=主として刑法」と「令=主として行政法」のふたつで構成された法律。
 転注して、意味が進展しました。命じられたことの中味をさしていたことから、命令を出す人のことも「令」と呼ぶようになりました。

2 「令」は、人の上に立って命令を出す長官の意味も表わす→県令=県の長官

3 さらに、人の上にたつような身分の高い人の家族への尊称となった→令嬢・令息・令夫人

<つづく>

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20190704
 「令和」の令について、13年前2006年に考察したときは、まさか新元号に使われる漢字とは思っていませんでした。
「令」は、命令という元の意味から「命令を出す身分が高い人の尊称」にかわり、さらに「よい・立派な」という意味に転注されるまで、かなりころころと転々しました。

 万葉集から引用といっても、前書きに書かれた漢文からという、むりくりの「令月」引用でしたが、万葉仮名とは、漢字を利用した文字であり、日本語は中国語の漢字を応用して発展したことを、皆が思い出せてよかったんじゃないかしら。
 「日本語が、万葉集が、古事記が」と、日本を強調した結果、日本語表記は、中国からの文化の流入によって豊かになったのであることが再確認できました。

 日本のことばと文化は、大陸からも半島からも、シベリアなど北の地方からも南の島からも、さまざまな文化が押し寄せ、ミックスされ、この地に残ってきたものです。
 さまざまな文化を伝えてくれた人々に感謝。それをこの風土に合うようにアレンジし伝えてくれた人々に感謝。

 令和時代には、その名にふさわしく各方面とのよき交流と和を大事にしてほしいと思います。

 早速並んだ令和商品、ラベルを張り替えればいいだけの日本酒は当日から登場


 ♪新元号がレイワっで酒が飲めるぞー、酒が飲める飲めるぞ、酒が飲めるぞー
 まあ、いつでも飲んでいますけどね。

<7月後半へつづく>
コメント
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