春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「シルクロードのドゥタール」

2019-09-01 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190903
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記古希音楽(1)シルクロードのドゥタール

 東京都北区の無料コンサート「まちかどコンサート」、7月の公演は、駒﨑万集演奏のドゥタールでした。ドゥタールって、なんだろう、どんな楽器なのか、ということも知らずに興味しんしんで出かけました。

 ドゥタールは、イラン発祥の楽器です。イランのことばペルシャ語は印欧語族のことばですから、英語やフランス語と祖先は同じ。Dutar (ドゥタール)のDu はペルシャ語で2。(フランス語でも2はdeuxドゥ)、 tarはペルシャ語で「弦」。マンドリンのような形の弦楽器で、長い竿に2本の弦が張ってあります。弦は絹糸を撚った糸で指で弾いて演奏します。絹糸なので、やわらかい音が出ますが、大きな音が出しにくいため、演奏会などでは、マイク使用せざるを得ないのが残念。

 現在は、中央アジアのウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、中国の新疆ウイグル自治区で演奏されています。形、大きさ、弦の質など地域により様々な種類のドゥタールがあります。

 中央アジアのの地図(外務省HPから借り物)


 演奏者の駒崎万集(こまざきましゅう)さんは、都立日比谷高校から東京音楽大学ピアノ科に進み、卒業後青年海外協力隊員としてウズベキスタンのブラハ氏にある小中一貫校の音楽教師として赴任しました。1年後、ウズベキスタンの民族楽器ドゥタールを知り、ウズベキスタン語による歌唱と演奏を習得しました。dutar演奏は、Guzal Muminova氏に師事。

 2017年に帰国後は、ライブ・コンサートなどで演奏をしています。2018年9月に開催されたウズベキスタン第1回伝統音楽フォーラム(International Maqom Art Forum)において、伝統音楽ソロの部で3位に入賞したそうです。
 
 まちかどコンサートのチラシ「シルクロードの響き」に出ている駒崎さん(画像借り物)


 ドゥタールの演奏をはじめて聞きました。
 すてきな民族衣装で登場の駒崎さん、Chichek(花)という曲からはじまりました。
 2016年にドゥタールと出会って練習を開始したというプロフィールなのに、演奏は豊かな響き。ウズベク語の歌声も、ウズベク語はまったくはじめて聞いた私にも、失恋の悲しみなど、歌の内容が伝わってきました。

 タジキスタンとウズベキスタンは、中央アジアの隣合う国。どちらも旧ソ連に属していた共和国です。両国とも1991年にソ連崩壊後、独立。タジキスタンの首都ドゥシャンベ。ウズベキスタンの首都はタシュケント。アラル海があります。国名の語尾istanは、「~の国」という意味。ウズベキスタンは、「オズベクの人々の国」という意味です。

 どちらの国も、国民にはイスラム教徒が多い。文化的にも近く、日本に住む私には、申し訳ないけれど、区別がつけがたい。たとえば、サマルカンドと聞いて、はたしてウズベクなのかタジクなのか、地図をみなければ、判断できません。
 カザフスタンとタジキスタンからの国費留学生を受け持った記憶があるけれど、ウズベキスタンにはまったくなじみがありません。

 駒崎万集さんは、ウズベキスタンの曲タジキスタンの曲、どちらも聞かせてくれました。ウズベク語はアルタイ系で、トルコ語モンゴル語ウイグル語などと同じく、日本語と言葉の並べ方は同じ。単語を覚えて、日本語のとおりに並べればよいので、2年間の海外青年協力隊赴任の間に習得できた、と語っていました。  

youtubeにUPされている駒崎さんの演奏と歌(↓の歌が、7月6日に演奏された曲目と同じかどうか、私には区別がつかないんですけれど)

 タジキスタンの歌「Qalabandi」
https://www.youtube.com/watch?v=9O7POPfKwhM

 ウズベキスタンの歌
https://www.youtube.com/watch?v=n_jG13fL9u4

 7月6日の曲目は
ウズベキスタンの曲
・ギロス(gilos)
・ドゥタール・バヨティ(Dutor Bayoti)
・チャマン・イチラ(Chaman ichra)
タジキスタンの曲
・キシュロキ シュモ(Kishloki shumo)
・オハンギ シャルキ(Ohangi sharqi)

 2回目に聞いたとしても、私のおバカ耳には、どの曲も同じに聞こえてしまうかも。でも、聞いている間は、シルクロードの風が吹き渡るような心地よさを感じていました。

 終演後の駒崎万集さんとドゥタール


 聴衆はいつもの通り、ほとんどがオバはんオバーさん。たまに夫婦連れの男性。オバーさんのひとりは、終演後駒崎さんに「旧ソ連時代に中央アジアを旅したことがあるの。今日演奏を聞いてなつかしくて涙が出た」と語っていました。

 もうひとりのオバは、地域テレビのインタビューに答えて「演奏だけじゃなくて、中央アジアの文化などについて、もっと説明してほしかった」と、ダメ出ししていました。
 私は、文化などを知りたければ、今の時代いくらでも知る方法はあるんだから、自分で調べたらいいでしょ、と思いました。文化講演会じゃなくて、演奏会なのだから、演奏をたくさん聞かせてもらったほうが、私はうれしい。

 演奏する駒崎さんのうしろに下げられていた伝統的な刺繍の布。スザン二。


 ウズベキスタン周辺の中央アジアの遊牧民は、美しい手刺繍を施した布、『スザンニ(スザニ・スザーニ)』でテントを飾ってきました。現代はどの国でも定住生活が増えていますが、スザンニで部屋を飾る伝統は続いています。
 中央アジアの文化、遊牧の暮らしは少なくなるのは時代の流れでしょうが、スザン二などの手仕事の文化、伝統楽器の演奏など遊牧の暮らしを伝える文化はなくならないでほしいと思います。

<つづく>
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする