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ぽかぽか春庭アーカイブ「山口昌夫」

2023-03-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230314
ぽかぽか春庭アーカイブ(や)山口昌夫

☆☆☆☆☆☆
春庭千日千冊 今日の一冊No.42
(や)山口昌男『道化的世界』

 私は、日本語教師になるつもりはなかった。たまたまの巡り合わせでこうなってしまったのだ。
 子供のころ、成りたかったのは「探検家旅行家」だった。
 小学校時代の夢。1,童話作家。アンデルセンのように旅をして、飛行鞄や吟遊詩人みたいなお話を書く。(小学校の間、ノートに自作の童話を書きためていた)2,スタンレーのようなジャーナリストになって、アフリカ探検に行く。(卒業文集にはジャーナリストになる、と書いた)
 中学生時代。3,スウェン・ヘディンが、ロプ湖を発見したように、考古学者になって桜蘭やゴビ砂漠を旅する。
 高校生のころ。4,泉靖一のような文化人類学者になってインカやアステカを調査する。
 20歳ころ。5,トール・ヘイエルダールのような海洋人類学者になって、葦船やいかだで航海する。
 30歳前。6,川田順造・山口昌男のような文化人類学者、神話学者になってアフリカ世界を調査する。

 夢見るころを過ぎて、振り返れば、1から6まで、何ひとつ実現しなかった。
 ころころと目標人物が変わったが、一貫しているのは「遠くへ行きたい」ということだった。今でもむろん、夢を見ている。いつか必ず世界を放浪、右手に『地球の歩き方』左手にはデジカメ持って。

 『地球の歩き方』は別名『地球の迷い方』。この本片手に旅をして、迷ったヤツは数しれず。迷った人ごめんなさい。夫はダイヤモンドビッグ社の下請けです。本の奥付にある社名は、Free lance shield をもじった私のネーミング。

 夫と出会ったのはケニアのナイロビ。山口昌男の『アフリカの神話的世界』にあこがれてアフリカに行ったものの、神話学も演劇人類学も落っことして、夫を拾って帰ったことは10/19ほか何度か書いた。

山口昌男の著作、一番最初に読んだのは『アフリカの神話的世界』。それから1977年以前に読んだ本をあげると、『人類学的思考』『歴史・祝祭・神話』『文化と両義性』『道化的世界』『道化の民族学』『知の祝祭』など。

 山口は、道化トリックスターをとりあげ、世の中の事象をあざやかに解説して見せた。山口やその他の文化人類学関連書を読んでのち、フレイザー『金枝篇』を読んだときにはさっぱり理解できなかった世界が、見渡せるようになった。

 一度だけ、山口のすぐそばに腰を下ろしたことがある。岩手県遠野へ早池峰神楽を見に行ったときのこと。芸能人類学をめざして、能狂言、歌舞伎、民俗学、伝統芸能などを学んでいた頃だ。

 早池峰には山伏神楽と神人神楽のふたつがあるというのだが、私が見たのがどちらなのか、覚えていない。学生達は板の間にぎゅうぎゅう詰めに座って、神楽が演じられるのを見ていた。神楽もすばらしかったのだが、私はなんとかして山口昌男にミーハーファンとして話しかけられないかとチャンスをうかがい、気もそぞろ。

 神楽は、延々と演じられる。能狂言を教わっている教授に連れられてきた私たちは、教授が全部最後まで見る、というので、席を立つわけにはいかない。しかし、山口昌男は教授と話を続け、「さわり」の部分だけ見ると、さっさと席をたって出ていってしまった。

 能狂言を学ぶにも、山口の『道化的世界』の中の「能の神話的古層」を読むことで、能舞台の松にもまったく異なる光があたる気がした。しかし、よく理解できないことも多かった。「山口的世界」が本当によく理解できるようになったのは、言語学を学びなおして、記号論が理解できるようになってからだった。

 山口は「一つの文化の中に生きている人間の世界についてのイメージ、(これを「宇宙観」「世界観」と呼ぶ)を再構築しようという試みが顕著になりつつある」と「能の神話的古層」の冒頭で述べている。こういう内容、1977年ころの私の頭には、理解するのが難しかった。いったり何を言っているのか。世界観?宇宙観?再構築?

 しかし、今や中学生までが「このFF9の世界観が好きだ」などと、「世界観の再構築」などについて熱く語り合っているのだ。息子たちのゲームバーチャル世界での話である。

 「聖剣伝説の世界観ではね。世界はイメージで成立しているんだ。だから、自分がイメージできないことは、存在していないってことだし、自分がゲーム世界で演じているってことは、すなわちイメージが構築できているってことなんだよ。ただし、主人公は、プレイヤー自身の個人的背景を投入することによって存在できて、、、、」などと、息子に熱く語られても、さっぱり「ゲーム的世界」「世界の再構築」が理解できないのだ。

 「あんたらのやってること、言ってること、まったくわからん」というのは、30年前に私たちも言われたことなんだけどね。かくして世代は交代し、かくのごとくに季節はめぐる。
 ふぅ、団塊の世代の「働き盛り時代」も、まもなく終わる。季節はめぐり、廻ってゆく。もうすぐ冬がくるんです。冬支度はOK?こたつ出した?電気毛布にホッカイロは?。

 でも、木枯らし吹くのはもうちょっと待って!来週、日本事情の授業は教室飛び出る。戸外でピクニックしながら日本文化のレポート発表するって、留学生と約束しちゃった。「こども動物園」で、お弁当食べながらの授業です。ぽかぽか小春日和の日だといいな。春庭いつでもポカポカです。主に頭が。
~~~~~~~~~
20230315
 桜、開花宣言でました。
ソメイヨシノは全国で東京が1番早い開花なのだそうです。温暖化とかヒートアイランドの影響とかいろいろあるようですが、開花を待ちわびる人には早く早くさいてほしいというところ。この春は、集まって飲めや歌えも大丈夫みたい。私は毎年散歩花見。

<つづく>
コメント
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