2024718
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>数え方の世界(4)助数詞の数え方
春庭の過去ログから、数字に関するコラムを再録しています。
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20130604
大学の留学生センターで教えていたころ、ジェスチャーや絵カードなど視覚的に日本語を導入すると効果がありました。
文字ではなく耳からことばを覚える言語の母語話者にとって、文字は意味をじゅうぶんに把握してから身につけるもの。
「くるま いちだい、 くるま にだい」の音(発音)を頭にいれてから「車一台、車二台」を覚えます。
絵カードを多用して助数詞を導入しました。
助数詞をもたない英語圏の学生は、ものを数えるたびに、紙は1枚2枚。リンゴは1個2個、車1台2台はわかるけど、小さなカメラも1台2台は納得できない、とか、とてもややこしくて覚えるのに苦労していました。
しかし、アジアなどでは、助数詞の表現が日本語より多様な言語あります。たとえばベトナム語では
・無生物全般 cái=~個
・生物 con =~匹、~頭
・丸い物、果物など quả= ~個
・紙 tờ = ~枚
・本 quyển, cuốn =~冊
・細長いもの chiếc = ~本
あまり混乱もなく、「そうか、紙を数えるときは、tờ=まい」と、覚えるだけで、混乱はありません。
助数詞がない母語の学生は「スライスしてある食パンは1枚2枚と数えるのに、アンパンは1個2個とかぞえなくちゃならない。こりゃ迷うよ」となりました。昔の欧米のパン屋では、食パンを切り分けて売っていることも少ないらしいのです。(今はどうですかね)
さて、現在の日本語教室で、クラスの多数を占めている中国。中国語には、量詞(助数詞)があります。
一番多用される助数詞は「~个」です。个は日本語の個にあたり、若い人は何でも数えるときに「1个イーガァ、2个リャンガァ」と数えてすましています。日本の若者が何を数えるのも「1個、2個」ですませているのと同じ。
若い日本人は「カンビール、1コ飲んだ」「きのうパソコン1こ買った」「ボールペン1こ失くした」と言います。
ところで、一ケ月、二ケ月というとき、なぜ「ケ」を使うかご存じですか。「ケ」は、もとの漢字は「箇」でした。正式な表記は、一箇月、二箇月。
それを簡略にした異体字が「ケ」であり、中国簡体字では「个」と表記します。个=ケ=箇
助数詞にとまどって「ものを数えるのに、こんなややこしいことば使わなくてもよい」と投げ出す欧米出身の学生とはことなり、中国学生は、理屈さえわかれば、助数詞を毛嫌いすることはありません。
「个=個」は、いちばんなじみやすい。
・ 一 个 人(イーガ レン)「ひとり」
・ 一 个 苹果(イーガ ピングヮ)「リンゴ 1 個」
・一 个 目的(イーガ ムーダ) 「ひとつの目的」
たいていのものは「 个 」でOK。そのほかのものも、覚えるのに欧米学生のようには、苦労しない。馬は、現代日本語では1 頭と数えるが、中国では牛は一頭だが、馬は一匹、などの違いを飲み込めば、OK。
日本では電車や地下鉄の車両は「一輌、二 輌」と数えますが、中国語では 自行车(自転車)も「一辆、二 辆」です。(辆は輌の簡体字)
・ 一 匹 马 「馬 1 頭」
・一 头 牛 「牛 1 頭」 「头」は「頭」の簡体字
・ 一 辆 自行车 「自転車 1 台」
・ 一 架 飞机 「飛行機 1 機」 「飞」は「飛」、「机」は「機」の簡体字
・一 支 烟 「たばこ 1 本」
・ 一 盒 烟 「たばこ 1 箱」
・一 条 烟 「たばこ 1 カートン」
・ 一 把 雨伞 「雨傘 1 本」 「伞」は「傘」の簡体字
「把」は、「持ち手のある道具」に使いますから、「剪刀はさみ」も「菜刀ほうちょう」も、「把」。
・一台电脑=一台のパソコン
これなどは、「台」は日本語とまったく同じなので、覚える苦労はなし。
以上、助数詞のある母語の学生がいるクラスと、ない母語がいるクラスでは数え方の出てくる課の導入の仕方も変わってきます。(教科書「みんなの日本語」では11課)
日常生活では「なんでも1コ2コ」ですませても通じますが、日本語能力試験に出題されることもあるので教えておかないとね。
私は絵を自分で書くのは超チョー苦手なので、ネットの無料イラストを利用しています。助数詞も楽しみながら絵カードなどを利用して教えていきます。
さて、今年の学生は、どのくらいで覚えてくれるかな。
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20240727
この絵カード、留学生用じゃ、ありません。最初に教えるのは「紙」と「車」の数え方。何度も書いてきたので、「なぜ車と紙なのか」の答えは正解がでると思います。
正解。紙は「枚」で数え、1から10まで「まい」。車は「台」で数え、1から10まで「だい」。発音が変わりません。鉛筆は、ほん、ぼん、っぽん、と発音が変わる。ジュースは、はい、ばい、っぱい、と変わる。椅子の一脚二脚やボートの一艘二艘は、中上級にならないと数えない。舟&ボートと客船汽船で数え方が変わるというのは上級。上級になると、箪笥はサオ、墓は基、豆腐は丁、などの助数詞マニアも出てきます。蝶々を一頭二頭と数えるのは、昆虫標本の英語数え方1head、2headを直訳したから。
初級では、ひとり、ふたり位牌の次はみたり、よたり、いつたり、むたり、とは数えず、三人以上は~にんで数えると教えますが、ななたりのサムライなんて数えたがる留学生もいるかも。
<つづく>