2013.6.19(水)雨
風邪を引いて寝込んだせいもあるが、最近多くの本を読了している。順次紹介していきたいが、その中で最も読みやすく、内容に引きずり込まれて一日で読んでしまった本がある。
「消された多氏古事記 まつろわぬ者の秘史」朴 炳植(パク ビョングシク) 毎日新聞社1991年発行 古書
多氏については雨読「東国の古代」(2010.8.20参照)で紹介しているが、どうも今ひとつ理解できていないので新たな本を読んでみたかったものである。
著者の朴氏は北朝鮮生まれの古代言語学者ということだが、日韓国語の音韻変化の法則を駆使して古代歴史の解明をされている。
”まえがきにかえて”の文章は半島生まれの朴氏だからこそ言えるだろう冷静な態度で日本人を語っている。
中略(戦後の復興に関して) もう一度立派な日本を建てなおした人々。「無名の庶民」。それが、偉大なる彼らの名前である。誠実と勤勉が代名詞になったこれらの「無名の庶民」たち。「神国」の指導者に言われるままに命までも捨ててきた、これら「偉大な日本の庶民」たちの特徴は、「無類の従順」であった。逆に言えば、権力を握った支配者にとって、これほど治めやすい民族はなかったと言える。
壬申の乱の勝者である天武天皇以降日本人に対する愚民政策が始まったという風に書いている。その出発点が国史としての記紀の編纂であろう。各氏族の持つ歴史を抹消し、天皇家の権威のみを追求しようとする記紀がそれがために多くの矛盾と謎を秘めているのは当然のことである。
天武天皇の最大の協力者であったオウ氏の安万侶がその編纂者として選ばれたのは、自らの氏族の歴史を抹殺されようとすることに抵抗する者たちを押さえ込もうとする高級な戦略だというのだ。
その抹殺されたオウ氏の古事記をコツコツと探し求め、拾い集めて物語風に書かれたのが本書である。正史には絶対に現れない驚くべきストーリーが展開され、そのすべてを鵜呑みにすることは出来ないが、専門の言語学を駆使して歴史考証をされていることがうかがえる。
最近ヤマト王権と熊襲との関連がとりだたされている本がいくつか出版されている。手持ちの「隼人の古代史」を読んでみる気になってきた。
【今日のじょん】じょんおべんとうついてるで。