晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

三国岳山行(3) 7/13

2015-07-13 | 上林たんけん隊

2015.7.13(月)曇り

 鉄塔の先の小広場に真っ直ぐと右手に下っていく道が見える。方向的には真っ直ぐの方だが、テープや紐の目印は右手の道に付いている。灌木の隙間から正面のピークの右手に送電線の走っているのが見える。地図では三国岳の手前の稜線の右手に送電線が書かれているので、てっきりこれだっと思い真っ直ぐ進む。ところが幾ら行っても道は下っている。やがて道そのものも怪しくなってきて、こりゃあ違うぞということになり元の広場に登り返す。

鉄塔の側を真っ直ぐ進むと小広場に出る。その先の道を降りていくと、やがて道は怪しくなる。
道の真ん中に、「陸軍省」「舞要塞〇地帯」という石柱が現れる。
再度地図を出すがどうも様子が解らない。現在地が確定できないのだ。テープの印を頼りにもうひとつの道を下ってみる。

二人がいる右手を下る。赤テープと黄色いクレモナロープの印がある。
 これもどんどこ下るばかりで、右手の尾根が段々高くなる。これもどうやら違うらしい、こうなりゃさっきの鉄塔に戻ってみよう。てんで再度登りなおして、鉄塔の傍で弁当を開く。「腹が減っては戦は出来ぬ」居直ってゆっくり弁当食べていたら、なんとそこにもうひとつ道があるではないか。入口には表示らしき印は何も無いが、ちょっと先に赤テープが見える。胡麻峠から来る道と直角に左に曲がっている。これが三国岳への道とすると先程の広場から見えていた山は何だ、そうまるで正反対の養老山方面になるわけだ。コンパスはきっちりその方向を指している。送電線と一緒に見えていた山は養老山に向かう655mのピークだ。

鉄塔のところ、×と〇、道標は無い。
 道に迷うというのは恐ろしいものだ、目的地に向かって進んでいるつもりがまるで反対方向へ進むのだから。学生時代に剣北面から剱岳に向かって縦走したことがある。小窓ノ王という岩峰の側を下って三ノ窓のコルで幕営する予定だった。すっかりガスって周りは何も見えなかったがもうその地点に居ることは認識していた。この雪面を下ればコルに到達するとばかりに下り始めるが、さほどの距離は無いはずなのにどんどん下ってゆく。おかしいなあっと思ってコンパスを覗く。南に向かっているはずが北を指しているのだ、心臓が高鳴って冷や汗が出てくる。戻るしか無い、20Kgの荷を背負っている後輩たちの目は明らかにミスコースをした私たちに不信を現している。這々の体で稜線に戻ったときには夜も更けて、天幕を張る平地も無い。ポールを立てること無くテントをかぶってビバークする、食事がとれたかどうかは憶えが無い。翌朝、目の前のすっかり晴れた青空の中にチンネがデンと居座っていた。そう小窓王の横の雪壁でビバークしていたのだ。笑った笑った、自然のいたずらの前に人間の行動なんてなんてちっぽけなものなのか、思い知らされた。あとからガスに捲かれて降りていった雪渓を地図で見ると、小窓雪渓に下る支沢であることが容易に分かる。迷うということはそんなもんなんだが、最大の原因は小窓王の横の雪壁は上り下りした経験があるし、三ノ窓コルやチンネからしょっちゅう眺めている景色であったと言うことだ。
 山のレベルは随分違うが、今回の失敗は学生時代の思いでと実は同じものだということが解る。経験があるが故の思い込み、胡麻峠から三国岳まで真っ直ぐに快適な道を進めばいいという思い込みがとんだミスに繋がった。つづく

 


 

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