2016.8.6(土)晴れ 猛暑
考古遺跡から発見される地割れ、地滑り、液状化跡などの地震の痕跡はその地震の発生年代を確定できる。さらに地震の記録を史料に求めれば同一地帯の地震の間隔が予想できる。こういったことが地震の予知に活かされるのがこの学問の目的であろう。地震学と考古学という違った分野の学問を結合し新たな学問とされたのが著者の寒川旭氏である。
地震考古学 寒川 旭著 中公新書1992年発行 古書
地震考古学と地震の日本史は寒川旭氏の姉妹本
発掘される古墳が微妙に食い違っていたり、掘り進めた遺跡の土壁に見事に現れる液状化跡のラインや噴砂跡などこれほど面白い現象はない。遺跡の柱跡や生活痕なども想像をかきたてるものだが、地震跡はそれ以上に生々しいものを感じる。そしてそれらが地層のどの部分にあるかで年代が予想できるのだ。文献だけでは心許なかった歴史上の地震が次々と科学的に明らかにされていく。
何度も大地震を繰り返している、東南海地震も各地の遺跡に残された液状化跡の砂脈からその時期が確定されている。同じ液状化層から時代をまたいで何度も液状化が起こっているのは興味深い。
古墳の変形や切断も地震の仕業である。古墳の造成年代から地震の起きた年代が予測できる。古文書と地震跡(地割れや山崩れなど)との関係も文書に書かれた記事の実証という関係となる。
文書が数多く残る秀吉の時代の大地震も遺跡に残る砂脈などからその地震の解析が行われている。
わたしが最も面白いと感じたのは「古屋敷の謎」という記事で、塩原街道沿いの関谷宿に関するものである。もともと古屋敷に宿があったという言い伝えがあり、生活に適していない関谷になぜ移転したかということである。その裏に関谷活断層系の大地震、日光地震が関係しているのである。地震割という地名と断層崖がその謎を解くのだが、古屋敷とは移転後に付けられた地名だと思われるのだが、古(ふる)とは古いという意味ではなく震(ふる)の意味ではないかとも思うのだが、どうだろうか。屋敷とは建物ではなくその場所を表す言葉である。
ともかく、地方の小さな歴史に地震の痕跡が主人公として現れるのは痛快である。
【今日のじょん】川合のワンコ
6月に紹介したことぶきちゃん、ずいぶん成長して子犬らしさが消えてきた。最初うれしそうに寄ってきたのだが、カメラを構えると恥ずかしがって隠れてしまった。