2019.3.7(木)雨
過酷な環境にわが身をさらし、ついに「凍えぬ体」を獲得したジャーナリストが、エビデンスを示しながら「潜在的な身体能力を引き出す方法」の一部始終を明かす、、、、帯紙に書かれたキャッチフレーズのとおり著者のスコット・カーニーはジャーナリストで、ホフの怪しげな理論と行動に疑問を持ち、ペテン師の化けの皮を剥がしてやろうという意気込みでホフのプログラムを実行するのである。ところが意気込みとはうらはらに彼のメソッドにのめり込み、自分自身を変革することとなるのである。人類が快適さと引き替えに失った免疫力や潜在能力を取り戻そうという試みには同感するところが大いにあるのだが、そのプロセスは私たち一般とは随分違う。その主なトレーニング法は呼吸法、瞑想、寒冷刺激とされているが、その内容たるや強烈なものである。例えば呼吸法といえば私たちの考えでは腹式呼吸とか丹田呼吸法とか穏やかなものだが、ホフの呼吸法は最終的には5分間も息を止めているとか、息を止めて腕立て伏せを数十回するとかプールの底を鉄アレイを下げて歩き回るとか異常なものである。寒冷刺激ったって写真のとおり氷の湖を泳ぎ回るとか、氷水に浸かるとかまあ大変なものである。とにかく本書の最初に警告(WARNING)があり、「、、、、読者はこれらの行為が本来危険なものであり、深刻な害や死につながる危険性があることを自覚していなければならない」と書かれている。
この異常とも言えるトレーニングの結果、記録的なタイムでキリマンジェロの登頂を果たす、しかも短パン一丁で。またパーキンソン病やクローン病などの改善も報告されている。それぞれエビデンスも紹介してあるのだが、残念ながら理解できるものではなかった。結局ホフのメソッドの発想と趣旨は理解できるが、その内容たるやあまりにも常人離れしており、参考にもしようがないという感じを受けたのだが、最後の頁で著者は「寒い時期にこれまでより一枚だけ薄着することを提唱している、、、」と書いてある。
テクノロジーに頼ったり、氾濫する情報に安易に飛びついたりするのではなく、たまにはいつもの「快適ゾーン」の外に出て祖先たちのように周囲の環境の変化を肌身で感じ取り、寒さに安らぎを見いだす方法を探ってみる。本書がて本書がそのきっかけになれば幸いである。
この一文で分厚い本を読んだ労が報われた感がする。