詐欺の低年齢化が問題になっている。
【グラフ:オレオレ詐欺の被害件数】
振り込み詐欺被害の4割が集中する東京都で、昨年逮捕された「少年」は105人。3年前に比較すると8倍にもはねあがり、中学生が高齢者宅で金を受けとる「受け子」をしていたケースも報告されている。
少年法を改正して「厳罰化」すべきだというような過激な意見もあるなかで、自治体や警察だけではなく、さまざまな人々が問題解決へ向けた取り組みを始めているが、なかにはかなり“意外な人物”もいる。
それは、元・極道だ。
名前は、鬼龍(37歳)。さる広域組織の下部団体で組長を務めた人物だが、すでに組は解散。現在は政治結社「新日本臥龍会」の会長を務めている。鬼龍氏は言う。
「今の若い人はあまりにも安易に詐欺に手を出している。日本の未来を考えると、それは社会にとって大きな損失です。私は教育でこのような悪い流れを食い止めたいと思っています」
そう聞くと、読者のなかには「いやいや、それはあなたたちのような人たちが裏で糸を引いているんじゃないの」と思うかもしれないが、鬼龍氏は一概にそうともいえないと否定する。
「確かに、かつて私がいた世界では、そのような詐欺グループに関わる者も多くいました。それは事実です。ただ、私自身は若い者には詐欺だけは手を出すなと言って、キャバクラや金融などの“本業”をするように指導をしていました。高齢者などをだますというのは、任侠道から外れることだからです。個人的には、詐欺は撲滅すべきものだと思っています」
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●鬼龍氏のプロフィール
政治結社「新日本臥龍会」会長、および特定非営利活動法人「東京都教育推進協議会」会長。政治や青少年の教育・更生支援をテーマに講演会や自身のWebサイトで無料相談などを受け付け活動を行なっている。また、自身がこれまでの経験をいかしたメッセージをメディアで発信。鬼龍氏が幼少期から現在までの生き様などを包み隠さず書いた自伝書『一鬼夜行 波乱に満ちた男の生き様』を現在執筆中。Twitterアカウント @garyou_net、ニコニココミニティ「臥龍の侠塾」
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●詐欺の被害者にならないには
では、そんな鬼龍氏に、我々のような一般人が「被害者」にならないようなポイントを聞いてみた。まずは昨今、問題になっている未公開株などの詐欺についてだ。
「注意すべきポイントはパンフレットです。詐欺グループはとにかく相手を信用させるため、つくりものに金をかける。あまりにも立派なパンフレットを出されたら、なにか怪しいと思ったほうがいい。ただ、なによりも大切なのは、あまり欲をかかないことです。詐欺グループの間には以前、投資に負けた人の名簿などが出回っていて、そういう人を狙って『負けを取り戻しませんか?』と欲につけこんできます。株も先物取引も基本的にギャンブルです。ギャンブルというのは胴元がもうかるような仕組みになっています。おかしな欲をかかないのが一番ですよ」
さらに、鬼龍氏が警鐘を鳴らすのは、手形詐欺※(1)や小切手詐欺※(2)だ。経営難に陥った中小企業経営者や自営業者をターゲットにしたもので、古典的な手法だが、今も形を変えて残っている。
手形詐欺(1):資金調達を希望する企業に手形を発行させ、詐欺師はその手形を預かって姿を消す。取られた手形は最終的に第三者に渡り、手形を振り出した企業は融資を受けられず、さらに額面通りの決済を迫られるケースが多い。
小切手詐欺(2):第三者をだまして偽造小切手あるいは盗難小切手を換金させる手口が多い。
「巻き込まれないためには、絶対に裏書きをしない。白紙の手形を振り出さない。詐欺師はあの手この手で、経営者に裏書きをさせようとするが、絶対にそんな口車に乗らないことですね」
このように「詐欺撲滅」を訴える鬼龍氏だが、言葉だけではなくすでに行動も起こしている。特定非営利活動法人「東京都教育推進委員会」を設立。議員と協力しながら、少年院から戻った少年たちの更生や教育のサポートを行っており、将来的には、行き場を失った少年たちを収容できる更生施設を建設する計画もあるという。
「詐欺の世界では、知恵とアゴ(話術)が大事と言われているそうです。ただ、これはよく考えると、今の子どもの姿そのものではないでしょうか。私が子どものころは悪いことをしたら大人に殴られるのが当たり前でしたが、今そんなことをすればたちまち暴力教師や虐待と問題になってしまう。これでは大人をナメる子どもになるのも当然でしょう。それに加えて、屁理屈ばかりを覚えてしまった子どもはどうなりますか? 詐欺師になるしかないじゃないですか。私は、こういう子どもを多くつくりだした今の教育にも問題があると思いますよ」
●特殊詐欺の数は4年連続で増加
確かに、「詐欺を減らすためには、人材の流入を防ぐ」という発想はある。詐欺グループが金を受け取る手段は振り込みが多いという印象があるが、警視庁によると、実は「手渡し」が42.7%で最も多く、この受け取りに、未成年者が使われていることが多いからだ。
最近、神奈川県警などは「息子はサギ?」というキャッチコピーで高齢者への呼びかけをしている。それはもちろん大切なことかもしれないが、もう何年以上も大々的に注意喚起をしているのに特殊詐欺の数は4年連続で増加。警察庁によると、2013年の被害総額は486億9325万円と、最悪期の10年前に戻ったという。
異例の経歴をもつ鬼龍氏が、このような状態に一石投じることができるのか。注目したい。
[窪田順生,Business Media 誠]
【グラフ:オレオレ詐欺の被害件数】
振り込み詐欺被害の4割が集中する東京都で、昨年逮捕された「少年」は105人。3年前に比較すると8倍にもはねあがり、中学生が高齢者宅で金を受けとる「受け子」をしていたケースも報告されている。
少年法を改正して「厳罰化」すべきだというような過激な意見もあるなかで、自治体や警察だけではなく、さまざまな人々が問題解決へ向けた取り組みを始めているが、なかにはかなり“意外な人物”もいる。
それは、元・極道だ。
名前は、鬼龍(37歳)。さる広域組織の下部団体で組長を務めた人物だが、すでに組は解散。現在は政治結社「新日本臥龍会」の会長を務めている。鬼龍氏は言う。
「今の若い人はあまりにも安易に詐欺に手を出している。日本の未来を考えると、それは社会にとって大きな損失です。私は教育でこのような悪い流れを食い止めたいと思っています」
そう聞くと、読者のなかには「いやいや、それはあなたたちのような人たちが裏で糸を引いているんじゃないの」と思うかもしれないが、鬼龍氏は一概にそうともいえないと否定する。
「確かに、かつて私がいた世界では、そのような詐欺グループに関わる者も多くいました。それは事実です。ただ、私自身は若い者には詐欺だけは手を出すなと言って、キャバクラや金融などの“本業”をするように指導をしていました。高齢者などをだますというのは、任侠道から外れることだからです。個人的には、詐欺は撲滅すべきものだと思っています」
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●鬼龍氏のプロフィール
政治結社「新日本臥龍会」会長、および特定非営利活動法人「東京都教育推進協議会」会長。政治や青少年の教育・更生支援をテーマに講演会や自身のWebサイトで無料相談などを受け付け活動を行なっている。また、自身がこれまでの経験をいかしたメッセージをメディアで発信。鬼龍氏が幼少期から現在までの生き様などを包み隠さず書いた自伝書『一鬼夜行 波乱に満ちた男の生き様』を現在執筆中。Twitterアカウント @garyou_net、ニコニココミニティ「臥龍の侠塾」
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●詐欺の被害者にならないには
では、そんな鬼龍氏に、我々のような一般人が「被害者」にならないようなポイントを聞いてみた。まずは昨今、問題になっている未公開株などの詐欺についてだ。
「注意すべきポイントはパンフレットです。詐欺グループはとにかく相手を信用させるため、つくりものに金をかける。あまりにも立派なパンフレットを出されたら、なにか怪しいと思ったほうがいい。ただ、なによりも大切なのは、あまり欲をかかないことです。詐欺グループの間には以前、投資に負けた人の名簿などが出回っていて、そういう人を狙って『負けを取り戻しませんか?』と欲につけこんできます。株も先物取引も基本的にギャンブルです。ギャンブルというのは胴元がもうかるような仕組みになっています。おかしな欲をかかないのが一番ですよ」
さらに、鬼龍氏が警鐘を鳴らすのは、手形詐欺※(1)や小切手詐欺※(2)だ。経営難に陥った中小企業経営者や自営業者をターゲットにしたもので、古典的な手法だが、今も形を変えて残っている。
手形詐欺(1):資金調達を希望する企業に手形を発行させ、詐欺師はその手形を預かって姿を消す。取られた手形は最終的に第三者に渡り、手形を振り出した企業は融資を受けられず、さらに額面通りの決済を迫られるケースが多い。
小切手詐欺(2):第三者をだまして偽造小切手あるいは盗難小切手を換金させる手口が多い。
「巻き込まれないためには、絶対に裏書きをしない。白紙の手形を振り出さない。詐欺師はあの手この手で、経営者に裏書きをさせようとするが、絶対にそんな口車に乗らないことですね」
このように「詐欺撲滅」を訴える鬼龍氏だが、言葉だけではなくすでに行動も起こしている。特定非営利活動法人「東京都教育推進委員会」を設立。議員と協力しながら、少年院から戻った少年たちの更生や教育のサポートを行っており、将来的には、行き場を失った少年たちを収容できる更生施設を建設する計画もあるという。
「詐欺の世界では、知恵とアゴ(話術)が大事と言われているそうです。ただ、これはよく考えると、今の子どもの姿そのものではないでしょうか。私が子どものころは悪いことをしたら大人に殴られるのが当たり前でしたが、今そんなことをすればたちまち暴力教師や虐待と問題になってしまう。これでは大人をナメる子どもになるのも当然でしょう。それに加えて、屁理屈ばかりを覚えてしまった子どもはどうなりますか? 詐欺師になるしかないじゃないですか。私は、こういう子どもを多くつくりだした今の教育にも問題があると思いますよ」
●特殊詐欺の数は4年連続で増加
確かに、「詐欺を減らすためには、人材の流入を防ぐ」という発想はある。詐欺グループが金を受け取る手段は振り込みが多いという印象があるが、警視庁によると、実は「手渡し」が42.7%で最も多く、この受け取りに、未成年者が使われていることが多いからだ。
最近、神奈川県警などは「息子はサギ?」というキャッチコピーで高齢者への呼びかけをしている。それはもちろん大切なことかもしれないが、もう何年以上も大々的に注意喚起をしているのに特殊詐欺の数は4年連続で増加。警察庁によると、2013年の被害総額は486億9325万円と、最悪期の10年前に戻ったという。
異例の経歴をもつ鬼龍氏が、このような状態に一石投じることができるのか。注目したい。
[窪田順生,Business Media 誠]