平成14(2002)年度卒業式 学校長式辞
2003年3月19日
筑波大学附属高校学校長 海保博之
できるだけ高く舞い上がってください
今日ここに卒業することになりました、 237名の第111回生諸君 卒業おめでとう。 また、保護者の方々におかれましては、ここまで立派に成長した我が子をみて、感慨ひとしおではないかとご推察申し上げます。 心より、おめでとうございますと申し上げさせていただきます。
さて、 先月(03/2/23)の読売新聞に 日本の青少年(5千人)の意識についてのアンケート結果が載っていました。 その中に「日本の未来についてどう思うか」を聞いた項目がありました。 「暗い」「やや暗い」と答えた人がなんと75%もいました。 これからその社会に入っていこうとする若い諸君に、 そんな答えを、させてしまう社会を作ってしまった大人は 反省しなければならないのかもしれません。
しかし、大人も頑張ってきました。 ここまで豊かな社会になってきたのは、大人の頑張りがあったからです。 これからは諸君のがんばりにバトンタッチすることになります。 諸君のような若い世代のがんばりがあれば、 これからはどんどん明るくなるばかりの未来になります。 また、そうしなければなりません。
今日の卒業式を迎えた諸君は、 その「暗い」けれども「豊かな」社会へと飛び立つ飛行機のようなものです。 恐れず、思い切りよく、元気に、筑波大学付属高校と保護者が敷(し)いてくれた 滑走路を離陸してください。
離陸をしたら、もう大空です。 できるだけ高く舞い上がってください。 高ければ高いほど、遠くを見渡すことができます。 高ければ高いほど、いろいろのことが見えてきます。 そして、どこに着陸するのが自分にとって一番よいかを時折考えながら、思い切り飛び回わってみてください。
それが、これから20代半ばまでの諸君ができること、 しなければならないことです。 空を自由に自主的に自律的に飛び回るための基盤は、付属高校3年間で充分に身につけたはずです。
天候不順なときもあります。 飛行機の機体不良もあります。 進路を見失うこともあります。 しかし、地上の管制塔からは、保護者も母校も諸君の飛行ぶりを さりげなくモニタリングしています。 遠慮なく、助けのコールサインを投げかけてください。 いつでも喜んで適切な管制モニタリングをする用意はありますから、 安心してください。
卒業生諸君、そして保護者の方々にもう一度 「筑波大学付属高校の卒業、おめでとう」と申し上げて 校長の式辞といたします。
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○最も高く飛ぶカモメが最も遠くを見通せるのだ。
○重要なのは食べることではなくて、飛ぶことだ。いかに速く飛ぶかということだ。 飛ぶことの歓びを味わうために、 自由と愛することの真の意味を知るために、 光り輝く蒼穹の果てまで飛んでゆく一羽のかもめ、ジョナサン。 群れを追放された異端のジョナサンは、強い意思と静かな勇気をもって、今日もスピードの限界に挑戦する。
リチャード・バック「カモメのジョナサン」(新潮文庫)