浅草橋駅近くでランチタイム、特に店を想定していなかったため、ウロウロ。柳橋近くの佃煮屋さんに買い物をしようと駅前の信号を反対側に向かう。あまり来たことがない場所をウロウロ、釜飯屋やラーメン屋などが並んでいる中、クラシカルで間口の広いトンカツ屋さんを発見、お店に入る。
中は4人席が2つ、あとはカウンター、私はカウンターの真ん中に座った。ご主人はこの道50年と言った小柄なおじいさん、お茶を入れてくれたのは奥様のようである。
メニューをみるととんかつ定食、盛り合わせ定食(ヒレカツ、魚フライ、メンチカツ)、プルプル定食(豚生姜焼き風)、魚フライ定食、小海老フライ定食などが900円、ハンバーグ定食、かつ重定食が850円とリーズナブルである。今日はカツ重にしてみた。
お店の奥を見ると中庭があり、石を組んだ枯山水造りとなり、さらに奥には座敷と風流な造り。目の前はまるでオープンキッチンでご主人の調理がよく見える。注文は私以外は皆とんかつ定食、これはとんかつのほか、ご飯、味噌汁、漬物、小鉢(煮物)がつく。
見ていてすぐに分かったのはとんかつ定食はカツを揚げ、切って、さらに載せるだけですぐに出される。しかし、私のかつ重は揚げたてのカツを煮て、卵をかけ、しばらく煮てこれをお重のご飯に載せるのだから手間がかかり、すぐには出てこないのである。
それでも7、8分でカツ重は出来上がり、漬物と煮物も到着。そこでこのお重を写メに撮る。ご主人はおもむろに『お重は蓋を開けないとわからないよ』と突然話しかけてきた。私が同意して蓋を取り再び写メを撮ると、『この姿がいいんだよ』、実に気さくなご主人である。
作っているのを見ているから分かっているが、カツ重でもよく煮込んだかつ煮をご飯に載せるタイプでよく馴染み味が染みて美味い。味付けも見た目ほど濃くなくいい。
また、慌てて奥さんが出してくれた味噌汁の具はしじみ、貝は4つあったが中身があるのは2つ。しかし、貝のエキスが出ていていい味である。
煮物はさつま揚げ、筍、ほうれん草。特筆すべきはお漬物、大根ときゅうりの浅漬けだが、糠の香りが爽やかで美味かった。
食べ終わり、会計をしたあとお庭を見せていただいていいかを聞くと、襖を開けてどうぞと言ってもらった。『これは私の親父が作ったもので、私は引き継いだだけです。』とのこと。なるほど、かつての花街である柳橋にあっただけのことはある、立派な洋食屋さんであった。ご主人も奥さんもいつまでもお元気で。ご馳走さまでした。
百万石
台東区柳橋1ー12ー12
0338511361