築地の神社というと波除稲荷神社(なみよけ)、波除は大阪にもある地名だから読むことはできた。
かつての中央卸市場のすぐお隣にある。創建は築地の埋立と同じ江戸時代初期の1659年。荒波の影響で埋立工事が難航していたが、海面に御神体が見つかり、この地に社殿を立て祀ったところ、波が収まったため『波除稲荷』と尊称して江戸市民は厄除などにご利益があると信仰を集めたもの。
神社の鳥居をくぐると左側に大きな枝垂れイチョウの樹がある。すぐ右手には獅子殿があり、その中には黒い天井大獅子の頭が、反対側にはお歯黒獅子という赤い獅子頭が祀られており、ちょうど対座した形になっている。
天井大獅子は高さ2.4m、幅3.3m、重さ1トンの大きなもので、お歯黒獅子も高さ2.15m、幅2.5m、重さ0.7トンとやや小さめ、これをつきじ獅子祭りでは神輿に乗せて町内を練り歩く。ただ、今年はコロナウィルスの影響で中止となってしまった。
この神社には築地らしく『すし塚』『玉子塚』『海老塚』『鮟鱇塚』『活魚塚』『昆布塚』『蛤石』のほか、築地発祥の吉野家の碑もある。
市場で扱う商品は皆相場ものであり、こうした塚を作り、皆で感謝したり、霊を供養したりする碑が狭い境内に並んでいるのは面白い。
私もコロナウィルスの退散を願い、お参りすることにした。中央卸売市場は豊洲に移転してしまったが、今もこの神社に手を合わせる人は多い。