めずらしくベストセラーを特集。
誰も彼もが呼び捨てにされるネットの世界で、さんづけで呼ばれるだけでも池上彰があらゆる世代に受け入れられている状況が理解できる。
彼のテレビ番組が軒並み高視聴率なのは、もはやどんな番組も“仲間うちギャグ”“仲間うちネタ”になってしまっていることの反動だろう。マスに向かっていたはずのテレビが、実は狭い範囲に網を掛けることでしか視聴者をつなぎ止められないでいるわけだ。
“池上さん”の大人気は、わかりやすく伝えるということがどれだけ難しいか、わかりやすく伝えてくれるメディアがどれだけ求められているかを痛切に感じさせてくれる。ウチの親父も「週刊こどもニュース」は大好きだったし、実は内心反発しながらもわたしもお勉強させてもらってました(笑)。
上っ面、と批判されることを恐れてか、誰もあんなに丁寧に解説してくれないもんね。力量の問題でもあるだろうし。ウチの娘が通う高校では、円高の解説を池上さんのDVD使ってるほど。まあ、著作の売り上げにつながるからと、池上さんが格安の出演料でOKということもあるのだろうけれども。
で「伝える力」。ものすごいベストセラー。彼にこの本を書かせたPHPのセンスもあったにしても、これだけの需要があるのだから、いかにみんなコミュニケート不全なのかってことの証明か。
ただね、確かにわかりやすくて、噛んで含めるような伝え方は効果的かもしれない。ひとりよがりになるな、とする警告は身にしみた。でも、本として面白いかはまた別問題。もっとも、新書で「伝える力」を得ようと考えるビジネスマン(向けだとはっきりうたわれている)にとっては、文章のコクだのひねりだのってのは単に邪魔なだけなんだろうか。
なんか、そこんとこもビシビシ伝わってきて少し悲しい。池上さんの責任ではないわけだけど。