第二十五回「別離」はこちら。
前回の視聴率は18.3%と予想を上回り、好調をキープ。とはいえ、往時の「独眼竜政宗」や「武田信玄」のようなばかげた視聴率は無理にしても、もうひとつ突き抜けないのはなぜだろう。
わたし、お茶の間で見るにしては「真田丸」は濃密すぎるんだと思います。
シーンそれぞれにダブルミーニング、トリプルミーニングの嵐では、たとえコント芝居が勘所で用意してあったとしてもテレビドラマとしてはしんどい。今回もかましていますよ。直接的なタイトルのとき、三谷幸喜はドラマをひねりまくる。で、今回のように突拍子もないタイトルのときは、かえってドラマの本音のところが出て来やすい。もっとひねりまくっているとも言えるけれど(笑)。たとえば……
・朝鮮、明に攻め込むことで息子を失った哀しみをふりきったように見える秀吉。信繁に向かって「わしの頭がおかしくなったと思っているのであろう?」と例によって目は笑わずに問う。天下を統一したからこそ諸大名に“仕事”を与えなければならないとする主張には説得力がある。もう恩賞の土地は国内にはないし……でも、これはやはり秀吉の頭がおかしくなったための所業だと視聴者にうっすらと悟らせる。
・だめ押しに仮装大会を秀吉に開かせる。このばかげた史実に三谷幸喜は狂喜したと思う。実は士気が下がっていることなど承知の秀吉(次の子が生まれるから無理をする必要はなくなったという扱い)、うんざりな家康(今回は内野聖陽が脱いでます)、演し物が秀吉とかぶったために欠席せざるをえず、プライドがズタズタになる昌幸、妙にはりきっている片桐且元(小林隆)など、キャラ中心のドラマづくりの名手にとって、これほどおいしいネタはない。当時の世相をすべてぶちこんである。自分の芸の未熟さに気づかない秀吉に、朝鮮出兵の無謀さを象徴させたのはうまい。
これだけだったらこの回は頭でっかちに終わったろう。でも婆様(草笛光子)が、臨終のシーンの定型を大きく裏切って信繁と信幸に遺した言葉にはグッとくる。
ただちょっと演出がぬるい部分もあって……あ、その方が視聴率はアップするんだろうか。朝鮮出兵という歴史的タブーの回だけれど、まさかの19%台と予想。
第二十七回「不信」につづく。