事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

映画監督評伝 村川透篇

2017-03-11 | 映画

五社英雄につづいては村川透。「映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男」はむちゃくちゃに面白い本だった。映画秘宝系のライターが、村川の地元村山市などで徹底した取材を行っている。

まず、村川家というのがとんでもない旧家だったのが意外。お兄さんの村川千秋(山形交響楽団の設立者)が音楽畑の人なのだから、裕福なのだろうとは思ったけれど。

福島大学を卒業して日活に入社。なんと営業部配属。とても優秀な劇場支配人だったとか。しかし退社してまた日活に今度は監督志望として入社。よく考えるとこのあたりでちょっと変わった人なのがわかる。

彼のデビュー作はロマンポルノの「白い指の戯れ」。脚本が神代辰巳で撮影が姫田眞佐久という、新人監督としてはめぐまれたスタート。

スリのお話なんだけど、主演の荒木一郎はマジックが趣味で、そのせいかすぐにピックポケットを習得したとか。女優はこれも新人の伊佐山ひろ子。どちらもクールに見えたけれども、実は伊佐山はかなり悩んだりもしたようだ(だから村山の実家にしばらく滞在させたのだとか。さすが旧家)。

そしてこの作品がキネ旬ベストテンに入ったことで順風満帆の……というわけでもなかった。以降はヒット作もつくれず、田舎に引っ込んでいたときにテレビに誘われる。あの倉本聡がメインライターだった日テレ「大都会」だ。

村川がそこで会ったのが松田優作。PART1で優作が演じたのは、サングラスを最後の最後に外すと……な殺人者役だったけど、あれが村川演出だったのか。

それがきっかけで「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」「処刑遊戯」の遊戯シリーズが出来上がる。和製ハードボイルドがこうしてつくられたわけだ。そして柴田恭兵を発掘して「あぶない刑事」でブレイクさせる。

おそらく彼の最高作は「野獣死すべし」になるだろうが、そのスタイリッシュさからは想像もつかないほど、村川は段取りの人らしい。ふむ。そのあたりはいかにも北村山っぽいぞ。よくわかんないけど。

なんと村西とおる篇につづく

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