平原。馬のいななき。完全に西部劇のオープニング。監督ウォルター・ヒルのこの姿勢は最後まで徹底している。
主演はニック・ノルティ(「ノース・ダラス40」以来大好き)。やり手だが暴走気味の刑事。きつい仕事だからと、朝からコーヒーにウィスキーを仕込む(アル中時代のマット・スカダーを想起させます)。彼のクルマはおんぼろのキャデラック(オープンカーであることがラストで効いてくる)。要するに、保安官。
刑事を愛しながらも、いつもけんかになってしまう恋人役は懐かしのアネット・オトゥール。職業はウェイトレス。つまりは、鉄火場の女って感じ。赤毛じゃないけど。
敵役がとにかく悪くて、その悪さを強調するためか、常に女を盾にするあたり、あざといっちゃあざとい。その悪役の相棒がネイティブ・アメリカンなのは、新しいんだか古いんだか。
確実に新しいのはエディ・マーフィの存在だ。刑務所のなかでポリスの「ロクサーヌ」を絶叫する初登場シーンはすでに伝説。当時、テレビのサタデーナイトライブで人気が爆発しているときだったので、演技は硬いけれどもオーラがすごい。「ザ・ドライバー」で登場人物にほとんど語らせなかったウォルター・ヒルが、今度は度外れたおしゃべり野郎を起用したわけだ。
PART2は、すっかり大スターになったマーフィが製作を兼ね、だからニック・ノルティとビリングが逆転しているのがおかしい。二作ともエンディングにかなり凝っていて、そうか、ウォルター・ヒルはあの「ストリート・オブ・ファイヤー」の監督でもあったんだよなあと得心。
「落ち着けよでかいの。言ったろ?あんたはあたしのタイプじゃない」
は歴史的名セリフだったなあ。