「かもめ食堂」「めがね」などの荻上直子がLGBTを題材とした映画を撮る……きっといい映画になるんだろうとは思ったけれど、そういう作品だと知っていたらはたしてディスカスしたかなあ。なんか、展開が読めるような気がしません?諦念を静かな笑いでくるみ、観客が登場人物たちに激しく同意する感じなのかなと。
ちょっと違った。
過剰なくらいに娯楽映画として成立させようという意欲満々でした。
トモは小学生。シングルマザーのヒロミ(ミムラ)とふたり暮らし。しかし母親は男と出奔。「また?」とトモは絶望する。叔父のマキオ(桐谷健太)の家に身を寄せるが、そこには同居人がいた。トランスジェンダーのリンコ(生田斗真)だ。
ヒロミは育児放棄、マキオはゲイ、そこにリンコがからんでくれば世間はやはり奇異の目で見る。世間の目の代表が、トモの同級生カイ(彼もゲイの傾向がある)の母親ナオミ(小池栄子)や児童相談所職員の金井(江口のりこ)だ。
このドラマで起こることは、きっと日本中、世界中でいつでもどこでもあったことだろう。荻上直子監督は、でも世間を徹底して糾弾しようとはしない。かといって、性的マイノリティをかわいそうなだけの人たちにもしていない。
悔しくてたまらないとき、リンコがとる行動はひたすらに編むことだ。なんと受動的な、と思われるかもしれないが、その編むものが笑わせてくれる。
ジャニーズ事務所のなかで、生田斗真はひときわ変な役を選択しているように思える。演技することが楽しくて仕方がないのかもしれない。すでに女装の域を超えているしね。
トモ役の柿原りんかの、基本的に無愛想な感じもすばらしい。おすすめの映画です。そういう人たちもいるってことを、そういう人たちも含めての世間なんだってことを、なんで許容できないかなあ。