「文学史上最も大胆不敵な強奪計画が実行された。場所はプリンストン大学の警戒厳重な地下金庫。時価二千五百万ドル(値段のつけようがないと言うものもいるだろう)のF・スコット・フィッツジェラルドの長編小説全五作の原稿は、世界で最も価値あるもののひとつだが、それが消え失せてしまった。間を置かず一連の逮捕がなされたが、強盗団の冷酷な首謀者は原稿と共に忽然と姿を消した。FBIの精鋭たちが頭を抱え込んだこの難事件に、スランプ中の新進女性作家マーサー・マンが挑むことになった」
確かにストーリーはこの要約のとおりなんだけど、だいじな人物がひとり抜けています。それは独立系書店の店主ブルース。結婚はしているものの、サイン会にやってきた女性作家たちと浮き名を流す。もちろんマーサーも誘惑。彼がこの事件にどうからむかというと……。
ジョン・グリシャムと村上春樹という組み合わせが意外。
グリシャムといえば、「法律事務所」(「ザ・ファーム 法律事務所」としてトム・クルーズ主演で映画化。弁護士というのは時給が命なのだと知りました)、「ペリカン文書」(ジュリア・ロバーツ主演で映画化。ロバート・レッドフォードの「コンドル」が元ネタになっていることをグリシャムは作中で明かしています)、「依頼人」(ジョエル・シュマッカー監督、スーザン・サランドン主演で映画化。)など、どんどん映画化されるメジャー作家。超訳、で有名なアカデミー出版からも何作か出ているくらい。
かたや村上春樹はレイモンド・カーヴァーやアーヴィングなど、現代文学の翻訳のイメージが強い。まあ、チャンドラーやカポーティもやってるし、なによりフィッツジェラルドを何作か訳しているので当然か。
にしても、ミステリとしてはけっこうゆるゆる。ただし、登場人物のキャラは立ちまくり。さすがグリシャム。にしても、これを中学の図書館に入れようとしたのは誰だ(笑)。マジでわたしじゃないのよ。