事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「江神二郎の洞察」 有栖川有栖著 東京創元社

2012-12-18 | ミステリ

2540 長編4作がいずれも大傑作である江神二郎が活躍する短編集。ありがた感ありあり。

ドカベン」や「スラムダンク」などの少年スポーツマンガの面白さは、彼らがいつもいつもそのスポーツをやっている幸福感だと思っているけれど、江神やアリスたちミステリ研究会もまた、ありあまる時間を(実はそう長くはないと気づいているからこそ)、ミステリという“道楽”にいつまでも淫していられる幸せに充ちている。

江神が大学を卒業しない理由はこの書でも語られていない。でもひとつにはこの幸福感のおかげもあるだろう。うらやましい。

江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ) 江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2012-10-30
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最強のふたり政治篇

2012-12-17 | 国際・政治

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YouTube: Ludovico Einaudi - Fly.

うーやれやれ。しんどい選挙の結果になったもの。まあ、みんな予想していたとおりなのでわたし昨日は早寝してました。

さて、これから毎日あの旦那のにやついた顔を見なくてはならないのか……見なきゃいいんだよなニュース。うん。

でも否応なしに彼の施策は学校を直撃するだろう。だって、彼が本当にやりたい

・自衛隊 → 国防軍

は公明党がブレーキをかけるだろうし

・中国や韓国への恫喝

も財界が黙っていない。こうなると彼のフラストレーションは教育に向かうに決まっている。

新聞に小さな記事が載っていたそうだ。妻が小声で語る。

「遊説で移動するときにね、自由席しかないもんだからJRの職員がそこにわざわざ座ってとっといたんですって」

「ふーん。まあそれくらいはするかもね」

「でも、そばにいた人が『それっておかしいじゃないですか』って文句言ったの」

「ほぉ」

「よっぽど怒ってたらしくて、しまいには党首のほうが『だから謝ってるじゃないですか』って切れちゃったんですってよ」

「………いやしかしそれは……」

「小さいでしょう?こんなときこそユーモアで切り返すぐらいのことがどうしてできないのかしら」

うーん。

そういえば似たような話を思い出した。沢木耕太郎がむかーしの都知事選に出馬した石原慎太郎に密着取材した「シジフォスの40日」。すれ違おうとしたウェイターに「道を開けろ」と怒鳴る場面。

それだけで人間性を計ってはいけないのだろうけれど、政治家は小さなエピソードの集積だともいえる。このふたりがタッグを組む時代を生きなければならないとはなあ。

本日の一曲は「最強のふたり」(皮肉ですよもちろん)から「FLY」

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「007 スカイフォール」Skyfall (2012 SONY)

2012-12-15 | 洋画

Skyfallimg01 確かに“いい作品”だよなと納得しながら観ていた。でも同時に、これが007なのか?ととまどいながら。

ダニエル・クレイグ主演版「カジノ・ロワイヤル」以降、それまでのボンド映画がボンド映画であることのお約束に甘え、少しゆるい造りになっていたことの反省か(はっきりとジェイソン・ボーンの影響だと思います)、ハードでソリッドなアクションに回帰したのは大歓迎。

しかし非情な上司の命令によって死の淵をさまよった007が、酒に溺れ、体力が落ち、老骨あつかいまでされるというのはなあ……どんなときでも軽口を忘れないスーパーマンじゃなかったのジェームズ・ボンドは。

それによく考えたらボンドは「カジノ・ロワイヤル」でダブルオーのメンバーに選ばれたばっかりじゃなかったっけ。それがいきなり引退ですか(笑)。まあ、コンセプトが「旧いものはいい」だから仕方ないけど。

だから上質ではあるけれども、いまひとつのれない出来なのかな、と思ってました。ところが、後半は007映画らしさ爆発。アストンマーチンを飛ばし、ワルサーPPK(シンプルな新機能あり)を連射、そしてラストであの人が……ううううれしいよー。

今年の洋画は、「アメイジング・スパイダーマン」のラストが「ダークナイト・ライジング」にひきつがれ、そしてキャラの継承という意味で「スカイフォール」にも影響している。いいですな。

エージェントから「お母ちゃん」と呼ばれるジュディ・デンチが完全な主役。ボンドにしても、今回の悪役シルヴァにしても「母親であるMに奉仕すること」が最大の喜びなのだ。だからシルヴァの最後のリクエストは、ハビエル・バルデムの怪演もあってとても納得できるものだった。

この関係はイギリス王室と国民の関係とシンクロ。60年以上も君臨しているエリザベス2世を中心としたあの一家が、いかにやんちゃであろうともイギリス人は皮肉まじりに支持しているのと似ているかな。イギリス全体が「女王陛下の007」なのね。

完成までさんざんもめたこの作品の超大ヒットの要因は、ロンドン五輪の開会式における、女王までまきこんだPV。女王の方もあれくらいサービスしてもバチはあたらない。

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「ホビット 思いがけない冒険」The Hobbit: An Unexpected Journey

2012-12-14 | 洋画

Thehobbitanunexpectedjourneyimg01 興行収入における洋画のシェアがどんどん下降している。わたしの世代からするとちょっと信じられない。

もちろんむかしも邦画は洋画よりもずっと見られていた。映画の黄金時代と呼ばれる50~60年代、庶民の娯楽の王様といえば映画で文句なし。ところがテレビの隆盛と反比例して観客数は減り続け、映画を観ることは、デートなどの一種のイベントと化した。映画館に行くのが日常ではなくて特別なことになったのである。

そうなると洋画は強い。なにしろワールドワイドに稼げるので一本あたりの製作費は邦画とケタが違う。たしか「タワーリング・インフェルノ」が公開されたあたりで互角になり、以降抜きつ抜かれつしながら推移し、1986年以降はずーっと洋画上位。02年にはわずか二十数%まで邦画のシェアは落ちこんだ。

ところが、ところがところが06年にふたたび邦画が逆転し、その差はひらくばかり……その理由の多くが、特に東宝が顕著なテレビ局連動製作システムだろう。

テレビドラマで“おなじみの俳優”による“おなじみのストーリー”を映画館で観るということに、いまの若い観客はまったくアレルギーを感じないらしいのだ。もっとはっきり言うと、日本映画を観ることがださくなくなったのである。分水嶺は「世界の中心で、愛を叫ぶ」だろうか。

実はこの傾向は音楽界ではとっくに自明のことになっていて、Jがつかなくてもポップミュージックとはすなわち邦楽のことに事実上なっている。なんか、時代は変わったなあ。

さて、CG主体の映画づくりがドラマの弱体化を招いていると言われているなか、観てきましたよその代表格の「ホビット」。確かに、「ロード・オブ・ザ・リング」よりも宝石奪還だけが目的なのでシンプルなストーリーだ。

逆に、イライジャ・ウッドのジャンキー演技のうっとうしさからも無縁だし、前三部作では描けなかった魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)とホビットの身長差がきちんと。

「なにか来るぞっ!」

とドワーフが叫ぶと、想像をはるかに超えた異形の化け物が登場するのでビクビク。なにより、アンディ・サーキス演じるゴラムとビルボ・バギンズのなぞなぞ合戦の邪悪さ哀しさ、うさぎゾリのスピード感たるや……やっぱり、洋画は面白いけどなあ。

Thehobbitanunexpectedjourneyimg02

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三國連太郎のことPART7~告白的女優論

2012-12-13 | 芸能ネタ

Ishidaeriimg01 PART6「小津安二郎」はこちら

さあ、いよいよ三國連太郎の女優論が。

-(『復讐するは我にあり』で)倍賞美津子と共演するのは、これが初めてですか。

三國:多分そうだと思います。

-倍賞美津子は三國さんから見て、どんな役者だと思いましたか。

三國:お姉さん(倍賞千恵子)とは全然反対ですね。

-すると、ああいう風呂のシーンなんかでも、全然物怖じしないんですか。

三國:しませんね。

-そういう意味では度胸がいい。

三國:それはちょっと違うんじゃないですかね。割り切るとかなんかじゃなくて……。

-根っからの……。

三國:そう、根っからのものじゃないでしょうか。

-「釣りバカ」シリーズで西田敏行の奥さん役で出ていた石田えりに、感じは似ているんですか。

三國:いや、全然違うと思います。

-違いますか。何が違うんですか。石田えりと比べて倍賞美津子は。

三國:うーん、難しいところですけど、上手とか下手とかじゃなくて、頭の回転が違うんじゃないでしょうか。表現が難しいですけどね。

-タイプとして似ているかどうかわかりませんが、原田美枝子という女優がいますよね。

三國:うーん、僕は原田さんの場合は、あまり興味深くと言ったらおかしいですけど、女優さんとしてそんなに関心がないんです。

-小川真由美さんという人はどんな役者さんでしたか。

三國:印象はまったくありませんね。

……三國連太郎がスクリーン以外のところで女優たちとどんな関わり合いをもっていたかはよくわからない。でもまあ、かすかに伝わっている部分と、このコメントの落差には「あー、一筋縄ではいかない人なんだなあ」とあらためて。

にしても、佐野眞一の質問は煽る煽る。彼がいま、橋下との問題を自分のなかでどう総括しているのか、一度質問してみたい。インタビュイーとしての佐野は、はたしてどんな素材なのだろう。

最終回「追悼」につづく

怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること 怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること
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「キングを探せ」 法月綸太郎著 講談社

2012-12-11 | ミステリ

4062166208 四人が参加する交換殺人。用意されたカードで殺人の対象と順番が決定される。このあたりを徹底して理詰めで描いているので、本格ファン、特にクィーンのファンはたまらないと思う。ばらまかれた伏線はきちんと回収され、雑味はまったく残らない。

およそ交換殺人は実際には成立しないはず。物理的には可能でも人間的にまず無理。で、その無理っぷりも丁寧に描いてあるし、

「狛江市は二十三区外なので、変死体が見つかっても監察医務院に報告する義務がない。そのため、うつ病患者が自殺とおぼしい状況で死んだ場合、検視の段階で、事件性なしと判断される可能性が高くなる。」

というような描写もリアルなのでおみごと。ただし、雑味のなさがかえって息苦しい気も……

元狛江市民としては、殺人現場であろうが狛江が作中に登場するだけでうれしい。「岸辺のアルバム」(TBS)のときは「ここが風吹ジュンが入ってたサーティワンじゃん!」って喜んでましたし。

二十三区じゃないのに市外局番が03なのはここだけだったので(今でもそうですか)、住んでいるときは「ずるいぞー」とか言われまくりだったなあ。

映画化するとすれば、音楽は池田芳夫の「狛江シティ」でお願いします。

キングを探せ (特別書き下ろし) キングを探せ (特別書き下ろし)
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「鬼談百景」「残穢(ざんえ)」 小野不由美著

2012-12-10 | ミステリ

51ebne5roxl_sx230__4ゴーストハント」の作者のもとに、数多くの怪談話が集まってくるのは自然なことなのかもしれない。

それらを、剃刀の刃で慎重に切り分け、読者にレアで提供されたのが「鬼談百景」だとすれば、下味をつけて時間をかけて調理されたのが「残穢」だろうか。

予想とは違って不動産小説かと思うぐらいに“物件”の話がつづき、その因縁をさぐる経過がまたしても延々と。

これ、どこがホラーなのかな……と思った途端に本を放り投げたくなる仕掛けが施されていたことに気づき「うわあ」となる。勘弁してくださいよ。

と言いつつ、「深泥丘奇談」と同様に、綾辻=小野夫婦の日常がうかがわれてちょっとほほえましい。

 

 

 

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明細書を見ろ!2012年12月ボーナス号~公立学校共済組合

2012-12-09 | 明細書を見ろ!(事務だより)

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YouTube: ねごと 『ループ』

2012年11月号「洪水の前」はこちら

……の組合員の方々へお知らせ。と言ってるそばから若手が

「あたし、組合員なんですか」

と脱力するような質問も。公立学校共済組合員というのは……えーと説明がめんどくさいな。要するにヤマザワのカードよりもはるかにペナペナなブルーの保険証カードをもっている人のことです。期限付職員の健康保険証は肉厚の立派なカードなのに。

この共済組合は、文字どおり公立学校に勤務する教職員(例外もあります)で構成されているんだけれど、いまちょっと苦しい。

なぜかというと、高齢者医療の支援金が増額されたことに加え、少子化がどこよりも影響する業界なので、組合員の数がどんどん減っているから。

それだけでなく、公務員バッシングの一環で、共済組合の諸条件を“民間なみにしろ”という圧力がかけられているのです。

ということでいま総務省からリクエストされているのは

・医療費の自己負担額を上げろ

・結婚手当金をなくせ

共済組合がわたしたちに求めているのは

・苦しいから掛金をあげさせて

です。先週配布した『共済フォーラム』によると(この時期に配布して、まだちゃんととってある人がどれだけいるものやら)、自己負担限度額の引き上げは月額20000円→25000円。結婚手当金は

・平成25年度に8万円→4万円

・平成26年度 廃止

掛金は初の5%超えになりそう。限度額の引き上げは教職員互助会の財政を直撃するはずで……え、教職員互助会ってなんだですって?今度はそっちかー

本日の一曲は、ねごと「ループ」

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「人生の特等席」 (2012 WB)

2012-12-08 | 洋画

Troublewiththecurveposter 「おれみたいになるな。三等席の人生だ」

「お父さん、いつもうちで一番いい席にすわってたじゃない!」

原題Trouble With the Curveは、イーストウッド演ずる老スカウトマンがカーブで交通事故を起こしてしまうトラブルを直接には指している。でもそれ以外に、ドラフト候補がはたして変化球が打てるかが勝負であるため「カーブに難あり」の意もあるだろう。加えて

「おれは変われない」

「努力もしてないくせに」

娘に指摘されるように、人生でそろそろ軌道修正をする時期であることも象徴している。

「グラン・トリノ」から4年、俳優としては引退したはずのイーストウッドの復帰作。近年の監督作は、淡彩で描きながら傑作になってしまうパターンが多かったけれど、愛弟子に監督をまかせたこの作品では、思いっきりベタな展開+ベタな頑固ジジイ演技に徹しております。

そうなの、予想外にこれはハートウォーミングなストーリーをもとにした娯楽作でした。どうしてアメリカで客が入らなかったかわからん。

日本よりもはるかにマイナーな高校野球を追いかける伝説のスカウト。パソコンで管理する現代のスカウティングをまっこうから否定するアナログな男でもある。「マネーボール」で有名になったセイバーメトリクスに反感ありあり(笑)。

自分の眼しか信用していないためにスモールタウンを転々と(アメリカの美しさだけでもお腹いっぱいになれます)。しかしその眼がそろそろいけなくなってしまい、心の通わない娘が応援にやってくる……

娘を演じたエイミー・アダムスの「魔法にかけられて」以上のファンタジーともいえるけど、客を満足させずにいられるか、というイーストウッドの意地みたいなものも感じられてうれしかった。彼が「Uhhh」とうなるだけで客は満足するのにね。

「アイス・キューブがデ・ニーロより名優?冗談言うな」

「あいつは歌も歌える」

共演はジャスティン・ティンバーレイクですっ

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特等席。

2012-12-07 | ニュース

Fltroublewiththecurve_320x240 感動のラストの余韻にひたっていたら(inフォーラム東根)。大揺れ。

いったいどこが人生の特等席?ってぐらい揺れた。

通路ではスタッフが走り回っていた。

とりあえず、山形はだいじょうぶです。

万が一のことがあっても、イーストウッドの映画を観ながらだと納得できるような気がする。

学生のときのは(宮城県沖地震)ポルノ映画館ででしたから「こんなところで死んだら親に申しわけが立たん!」とあせりまくり。

さすがにもうないよな登戸銀映。

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